少しだけ背の高いミラに頭をぐりぐり撫でられながら涙を拭っていると向こうの方からこちらに向かってくる足音と話し声が聞こえてきた。普段人前で泣かないせいか、恥ずかさがこみ上げてきてパッと背中を向ける。急いで涙を完全に拭った。

「旦那と相棒来たわよ」

「いや誰」

ミラの言葉に顔を上げる。
丁度向こうの方から来ていた集団の足音が私達の前で止まった。

「あははお団子だ。君たち本当に仲良しだよねぇ」 

低めの甘い声が聞こえる。
ミラが言った"相棒"はこの人のことだったか。
毒舌気味に吐かれた言葉に振り返りながら答える。
ニッコリ笑った生きる伝説が予想より近くから見下ろしていた。

「日本では寒い時に"おしくらまんじゅう"するのよ、ヴィーチャ」

「ワオ!最近愛称...あれっ、レイラ泣いたの?」

ぐいっと整った顔が近づいてブルーの瞳に見つめられる。大体私が泣くのはこの人の前だからか直ぐに分かったらしい。何も言わずに目を逸らすと大きな手で頬を包まれた。

「...やっと、俺以外の前でも感情が出るようになったね」

とびっきり甘い声で囁かれて、普段から聴き慣れている筈なのに頬が熱くなった。私のそんな表情の変化を見て彼は更に嬉しくなったのかふ、と口元を緩めた。

ドスッ

急に鈍い音がする。
それと同時にヴィクトルが揺れた。
体幹を鍛えている彼は倒れることなかったが、その場に立ってまたかと言わんばかりの顔をしている。何があったのかと少し体を動かして彼の後ろの方を見ると、普段よりも数倍鋭い目をした美少年がヴィクトルの背中に蹴りを入れていた。

「さっさとその手離せ、じじい」

一際低い声で威嚇するように言うもんだから、少しだけだがこっちまで怖気付いてしまった。反射的にピクッと反応した身体と私の強張った顔を見て、ユーリは表情を柔らかくしてから足を下ろした。

ヴィクトルも掴んでいた私の頬を離してから両手を上げて苦笑しながら横にズレる。

「ユーリ「優勝した奴が泣いてんなよ」

言葉を遮られて優しく頭をポンポンと撫でられた。


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