突然で驚いたが、素直に受け取った。
確かにこの間お気に入りだった髪ゴムが切れて少しだけ落ち込んでいたが、それをユーリが見ていたとは。地味に嬉しくて頬が緩む。私の反応をじっと見ていたユーリが釣られて頬を緩めるのを視界の端で確認した。

「いい感じの雰囲気中ごめん。向こうから凄い視線を感じるんだけど...」

ミラの言葉にユーリが慌てて反論する。私も"いい感じって何よ"と目で訴えたが、私もあの期待されたような目線に気が付かない程馬鹿ではない。先程から痛いくらいに、号泣していた女性2人に見つめられている。

「...ユーリ、あれ誰?」

「あ?ああ...カツ丼のねーちゃんとバレエの先生」

名を言われた彼が向こうの方で必死に彼女らを止めようとしている姿とそれをヴィクトルが笑って見ているのが目に入った。あれは勇利の姉と先生だったのか、ということはヴィクトルも知り合いなわけで...。

そこでまた嫌な予感がする。
ヴィクトルが私を見て口元をにやりと歪ませたのは気のせいであってほしい。またもやミラも同じ嫌な予感がしたのか私の手を握ってきた。逃げよう、そう言われている気がする。

「...ねぇ、レイラ」

「うん、ミラ。ユーリ、私達そろそろ「レイラ!」


...ごめんミラ。
盛大に溜め息をした親友に心の中で必死に謝った。何故私はこういう面倒なものに巻き込まれやすいのだろうか。

私の名前を呼んだ彼を見る。
彼は立ち上がり片手を上げて"こっちに来い"指先を数回、自身の方に曲げていた。彼はこういうとき私が自分に逆らえないことを知っている。

「あーあ...サーラでも誘おうかな」

「えっ!ミラついてきてくれないの!」

「お、サーラ大丈夫だって。じゃあ私行くね!」

笑顔で手を振って背中を向ける親友。
私はそんな背中を見つめて"裏切り者"と心の中で思いっきり叫んだ。...仕方ない、今日のディナーは1人でどうにかしよう。

さて、呼ばれたからには挨拶くらいはしなければ。一呼吸置いてから振り向き直し、ユーリの腕を掴む。

「!」

「私、こういうときのヴィクトルには逆らえないのよね。挨拶だけしていくわ」

「...おう」


小さく返事をしてユーリが歩き出した。
歩幅を私に合わせてくれているのか、いつもよりゆっくりと進む。まるでパーティーでエスコートをされているような気分になって少しだけ恥ずかしくなった。




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