「えぇ!?ちょ、初めて見たその笑顔!怖い!」

「怖いって酷いなぁ」

フッ、笑みを浮かべた姿がエロスを踊っていたヴィクトルと被る。親友であるミラでさえ見た事がなかったらしい、水を飲んでいる横顔を見て目を輝かせていた。艶っぽさが増して前より綺麗な横顔。色目にも見違える、伏せられた目が少し濡れていて思わず生唾を飲み込んだ。

「...ふぅ」

「おっ、お前...調子戻ったんだな」

「うん?あ、もしかしてユーリ心配してくれてた?」

ニヤリ、口角を上げた彼女に慌てて立ち上がる。
見透かされたようなあの顔は苦手だ。

「っ別に!お前が変だと気持ち悪いんだよ!」

「ふふ、ありがとね」

さっきのとは違う、元気そうな笑顔を見て肩の力が抜ける。彼女の滑りを見ている間、無意識に力が入っていたらしい。...てっきり落ち込んだまま部屋に閉じ籠もってると思っていたから安心した。そのまま彼女らに背を向けて外へと足を進める。

「ユーリ行っちゃうの?」

「お前も練習終わりだろ、観光行ってくる」

前を向いたまま手を上げてからその場を立ち去る。
完全に胸の蟠りが消えたわけではないが、明日の大会は集中出来そうだ。リラックスする為にも今は疲れた身体を休めたい。どこか適当に歩いて散策でもするか...。

考え方をしていたせいか、女子の話し声が邪魔をしたせいか、レイラが最後に呟いた言葉は俺には聞こえてこなかったし、その後のミラとの会話には気付かなかった。



「...ちゃんと見てくれてたんだ」




「多分1番心配してたわよ、アンタの旦那様」

「誰が旦那だって?」

「決まってるでしょ、ユーリプリセツキー」

「いやいや...旦那じゃないし」

「よく言うわよー、昨日の夜チェックインのときユーリのファン見て嫌そうな顔してたくせに」

「モテるなーと思って見てただけよ」

「へぇ?じゃあその後、ユーリ見たくないって部屋に閉じこもってたのは何でかなー...」

「っ、もうミラ!」



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