「ったく、ミクリも人遣いが荒いんだから」


キラキラと目を輝かせ、もうすぐ開かれる大会に闘志を燃やすコーディネーター達を見渡しつつ溜息をつく。騒ついた会場の音で私の小さく吐いた愚痴と溜息は掻き消されてしまった。



ミクリカップ

数年に一度の臨時のポケモンコンテスト。
一応数年前にグランドフェスティバルで優勝しトップコーディネーターになった私は優勝争いの第一線から退きコンテストから遠ざかっていた為この大会には参加しないつもりであった。

しかし今回の主催者が嫌という程の知り合いで一応お世話になっているジムリーダーなので頼まれ事となると断り辛く、結局私も会場に来て裏方ではあるが仕事を手伝う事に。


「ね、あれ...」

「えっ嘘」


数年前にトップコーディネーターになったと言ってもやはりコーディネーターの皆には知られているようで、2階から彼等を見ていたのにも関わらず気付かれ注目される。とりあえず口元を緩めてひらひら手を振っておいた。


「...ミクリまだかしら」


手を振りながらこの場所で待ち合わせしている彼を頭に思い浮かべる。粗方準備が終わったところで連絡を入れるとここで待っていてくれと指示があったからこうして待っているのだけれど、彼が現れる気配は無く私が皆に見つかり注目を浴びるばかりだ。

美しさに拘りを持っている彼の事だ、会場にもその面倒と思うくらいの拘りを発揮させているのだろう。


「ねー、エーフィー。遅いよねぇ」


足元に連れていたエーフィーの頭を撫でる。
気持ちよさそうに目を瞑り「そうだね」と返事をするように一声鳴いた。ああ、そういえば家でお留守番しているミズゴロウは大丈夫だろうか。サーナイトを親代わりに一緒にお留守番させているが寂しくて泣いてはいないだろうか。

親バカっぷりを発揮させながらエーフィーにポロックをあげていると少し離れた場所から名前を呼ばれる。


「ナミさん!」


ミクリでは無い少し高めの声に顔をあげる。
視線の先にはロゼリアを連れた翠色の髪の少年。
クールな彼は珍しく顔を綻ばせて早足でこちらに近づいて来た。


「シュウくん」

「お久し振りです、来てたんですね」







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