私の言葉を耳にして、ダイゴは呆れ顔で私の頭をくしゃっと撫でた。
「何の為のプレゼントなの」
ダイゴはそう言って私の腰の辺りにあるモンスターボールを見る。赤いボールの中に、1つだけ水色と黒で出来たダイゴ好みで作ったであろうボール。この中には紅いメタグロスが入っている。
ダイゴがチャンピオンになるときに「僕がいないときに護ってくれるように」とくれた大事なポケモン。その当時はダンバルだったけど、ダイゴに追い付きたくて進化させた。
「この子をそんな小さい事に使いたくないの」
「何で?怪我するよりマシじゃないか」
首を傾げるダイゴを見てミクリは「相変わらず鈍いなぁ」と呟いた。そんな事言ったらまたダイゴが鈍い?何がだい?なんて言い出してややこしくなる「鈍い?何がだい?」…ほらね。
「あーはいはい!もうお話終わり!!」
これ以上ややこしくなる前に、と2人の会話を遮る。ダイゴは不服そうな顔をして、ミクリは少しニヤついた顔でこちらを見た。
「ほら、ミクリは仕事でしょ?」
「ああ、そうだね。そろそろ仕事に戻るとしよう…お邪魔なようだし」
ミクリはパチンとウインクを決めてから立ち上がる。玄関へ向かう途中ダイゴの肩を叩き、ミクリの朝ご飯を取りに立ち上がった私に聞こえない程度の声で何かやり取りしていた。お互い少し微笑んでいて…絵になるなぁ、なんて思ったり。
「邪魔したね、ナミ」
「あ、これ持ってってミクリ。朝ご飯、食べてないでしょ?」
「ああ、いつも有難う。じゃあ行ってくる」
小さなランチバッグを持ったミクリはじゃあ、と手を挙げてドアをくぐる。手を振り返し、ふぅと息を吐くとダイゴが私の頭に自分の手のひらを置いた。