「手を出してしまった...」
目の前で手を組み項垂れている古くからの親友は小さく呟き長々とため息を漏らした。ついに想い人である年下の幼馴染に手を出したらしい。私はそんな彼を見て笑ってしまう。彼の前に香りの良い紅茶を置いた。テーブルの中心にミルクと角砂糖も用意し、一応茶菓子も添える。
「長年悶々としてきたんだろう?良かったじゃないか」
「良くないよ...理性を保てなかったなんて、紳士失格だ」
「そんなに可愛かったのか、ナミの色仕掛け」
「想像しないでくれるかな」
やっと顔をあげたと思ったら美しい顔をキツく歪ませて細めた目で睨まれた。彼女関係になると本当にやきもち妬きになるな...ついこの間まで石好きの恋愛には鈍い男だと思っていたが、先日彼女に触れながら話をしていたところを見られた後、ダイゴはしっかりと目に嫉妬の炎を燃やして忠告してきた。そんなに好きだったなら直ぐに告えば良かったのに。
「...昨日は泊まりだったのか?」
「いや、流石にそこまで手は出していない」
「そこまで奥手な男だったのか?ダイゴ」
我慢しているんだと言わんばかりの目で見つめてくる彼に、両手を上げ参ったと伝える。彼は少し不満そうな顔をしたものの、"ありがとう、いただくよ"と紅茶を手に取り口をつけた。自分も同じように紅茶に手をつける。紅茶の香りが鼻を通り抜けていくのを感じる。
「ミクリも忙しくなるだろうが...出来るだけ彼女を見守っていてほしいんだ。僕は、帰ることが出来ないだろうから」
「ああ、それは約束するよ。私も守りたいものがいる気持ちはわかるからね」
「...」