私がエアームドに乗ったのを確認した彼は、自分も軽く地面を蹴り相棒の背中に飛び乗る。横向きに座っている私を落ちないようにしっかりと包み込んで"ルネまで頼むよ"声を掛けた。一鳴きしてから飛び上がったエアームドはチラッと私達を見て嬉しそうな顔をした。後ろのダイゴの顔が嬉しそうな穏やかな顔をしていたから、なんて私は気付かない。

「(...なんで嬉しそうなの?)」

「ナミ、寒くない?」

「大丈夫...エアームド、2人も乗せて重くないの?」

「重かったら、あんな嬉しそうな顔はしてないよ」


確かにさっき嬉しそうな顔をしていたし、今だって重さを感じない飛び方をしている。意外と平気なのかな...背中をそっと撫でるとエアームドはまた一鳴きしてほんの少しだけ速度を上げた。

頬に当たる風を素直に受け止めて、横に流した髪が靡くのを感じる。すぐ近くにいるダイゴに髪が当たるのではないかと思い、逆側に髪を流した。が、これが失敗だった。思った以上に彼の顔が近くにあるらしく吐息が耳に掛かる。擽ったいがここで身をよじるとエアームドの負担にもなる為大人しく耐えることにした。それがまたダイゴの悪戯心を擽らせたらしい。彼は擽ったさを我慢している私の露わになった首筋に唇を落としてきたのだ。

何度も何度も首筋に口付けされ、身体が反応して震える。擽ったさと同時に襲ってくる快感に声も漏れ出て、やめてほしいのに続きを期待してしまう自分がいて恥ずかしくなった。

「っ、ぁ...」

「はぁ...そんな可愛い反応するとは思わなかったな。こっち向いて」

「な、に...ん」

暖かいものに包まれて言葉が発せなくなった。
目の前に広がる彼の美しい整った顔。綺麗な目が伏せられまつ毛が頬に影を作っている。

「(え...)」

口付けされていたと気が付いたのは彼の顔が離れて親指で唇をなぞられたときだった。いつもの顔に色気を混じらせ私を熱く見つめる彼に、顔が一気に熱くなる。

「な、んで」

「美しくなった君と再会して、僕が何も思わなかったと思う?御曹司の僕にこの歳になっても婚約者がいないのは不思議だと思わない?」

「い、石が好きすぎて、婚約者に振られてるのかと...」

「ハハッ、酷いなぁ?これでも父親に頼んで婚約は拒否してたんだけど」

困ったように眉尻を下げた彼は私の頬を指でなぞり、そのまま耳に触れてくる。

「...本当は、まだ応えるつもりは無かったんだけど、可愛すぎて耐えられなかったな。全く、僕の幼馴染はいつこんな素敵な女性になったんだろうか」

「なにそれ」

「ごめんね、全部終わったら僕から言うから」

"期待して待ってて"
小さく囁いて顔を近づけてくる幼馴染。
告ないまま口付けてくるなんて、ずるい人...
期待して待ってて、なんて離れていく前に嬉しいこと言わないで。

2度目のキスは素直に目を伏せて受け止めた。
離れ側に『僕から送ったメタグロス、僕だと思っていつも持ち歩いてね』と笑顔で囁かれた。




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