「君は僕が好きなんだよね」
「さっきそう言ったじゃない。もう忘れたの?」
「好きな男に後ろから抱き締められているのに、他の男の事を思い出して笑うのかい?」
そう言われて気付いた。
最初は私がダイゴに体重を預けてバランスを取っていたが、今は私の腹部に彼の両腕がまわり、大きい身体に包まれている。完全に抱き締められていた。
「ダッ!?」
慌てて離れようとしたが、腹にまわった手がそうさせてくれなかった。そのまま引き寄せられ彼の身体にぽす、と収まる。ダイゴの顔が私の左肩に乗った。
「僕がいない間が心配だな...やっぱりミクリに側にいて貰った方がいいか」
「もう!1人でも大丈夫だってば」
「僕の腕さえも振り切れないのに?暴漢に遭ったらどうするんだい」
「大好きな幼馴染を拒むなんて出来ませんから。あと、暴漢には襲われませんし、本当に何かあればカナズミに帰ります!」
ふん、力強く息を吐くと彼は"それなら安心だ"と私のお腹に回していた腕を解いた。彼の体温が離れて少しだけ心細くなる。そのままメタグロスに降りようと指示した為、空中散歩も2人きりの世界も終わりを迎えた。支えられながらジャンプし、地上に足をつける。メタグロスを数回撫でていると、彼も直ぐにメタグロスから降りてきて、ありがとうと相棒を撫でていた。
「ダイゴはトクサネ?」
ミシロにいた私達。
ここで解散だろうと問い掛けると、彼はメタグロスと入れ替えでエアームドを出してきょとん、私を見た。
「...あれ、帰るんじゃないの?」
「送るよ。おいで」
酷く整った美しい顔に柔らかい笑みを浮かべて手を差し伸べてくる。淡い緑みの青色の瞳が細められ、しっかりと私を捉えていた。細く綺麗に見える彼の手はしっかり見ると、ゴツゴツした男の人の手で。
恐る恐る触れると力強く引かれ、軽々と私を持ち上げた。先程はメタグロスのサイコキネシスで持ち上げて貰った為気が付かなかったが、細身の彼にこんな力があるとは。