昨夜、幼馴染と食事をした後、ポケモンに乗せられてホウエンの夜景と星空を空中で楽しんだ。ドレスコードだったこともあって少しの間だけだったが、ああやって異性と2人きりで静かに綺麗な景色を眺めるなんて今までなかった為凄く新鮮で楽しかった。
とはいえ、先ほどの食事の際、説得する流れで私は彼に愛の告白をしたのだ。後ろから抱き締めるように密着してくる彼に、私の心臓は黙ってはいなかった。胸の鼓動が彼に伝わらないようにどうにか抑えようとする。頬も熱いが、寒さのせいだと勘違いしてくれるだろう。
「...ナミ」
耳元で囁かれるように名を呼ばれた。
彼の低い甘い声が電撃のように響き、身体が勝手にピクッと動く。我慢したが小さく声が漏れた。
「ンッ」
「...今のは流石に僕でもドキッとするな」
「私のこと女として見てないくせに良く言うわ」
ダイゴの吐息が掛かった耳を押さえつつ、先程の私を哀れむように鼻で軽く笑う。私は何年も前から彼に片想いをしてきたのに、先程の反応を見る限り、彼には届いていなかったのだ。彼を選んでしまい想いを断ち切れなかったのは私だが、流石に哀れになる。
「そんなこと、いつ言ったかな」
「え?」
「ねぇナミ。君は僕と離れている間に何人の男に言い寄られた?」
「えぇ...?」
普段通りに問い掛けてくる彼に困惑する。
なぜそれを聞くのだろうか。
確かに、自分で言うのもなんだが容姿は整っている方だし、コンテスト出場をしていると会場にいる人に良く話しかけられていたが...。
「この間、ミクリカップで出会った少年もその中の1人かな」
「うん?シュウくんのこと?」
お手伝いとして参加したミクリカップで会話した異性といえば彼くらいしかいない。コンテストの後、ライバルだという女の子を紹介してもらったがあれから2人はどうなったのだろうか。クールな彼がコロコロ表情を変える姿はとても面白かった。
これから第一線で活躍するであろう後輩を想像して頬を緩めると、私の顔を覗き込んできたダイゴが少し不満そうに顔を顰めた。