"たまにはいいと思ってね"
そう言ってからダイゴは葡萄酒を煽る。飲み干すのに合わせて彼の喉がゴクリと音を立てた。口元をナプキンで押さえた彼は伏し目がちに私を見てから言葉を詰まらせる。ああ、これはいよいよだなと勘付きカトラリーを置いた。彼も私が勘付いたのに気付いたらしく、ナプキンを膝に戻してから真っ直ぐに私を見た。





「...大事な話があるんだ」


十分過ぎるくらいに間を取ってから苦しそうに吐き出された言葉。彼にとってそれ程この"ミクリに教えられた"件が言いづらいことなのだ。黙って真っ直ぐ彼の目を見る。重々しく唇が開かれた。

「5年前、協会が研究していたポケモンが逃げ出してしまってね。今まではジムリーダー候補の人が捜索していたんだが、少し事情が変わってしまって、リーグ関係者全員が行動することになったんだ。だから、しばらくの間顔を出すことが出来ない」

「うん」

「今まで僕が忙しいときはミクリに任せていたけれど、いずれミクリも...」

そこまで言ってまた口籠る幼馴染。
彼はいつまで私を守る気でいるのだろうか。もう幼い頃の私ではないのに。いざというときは1人でもやって行けるのに。小さく息を吐いて目を閉じる。頭の中でミクリに言われた事を再度思い出して目を開いた。


「あのね、ダイゴ」

「?」

「確かに私は貴方より年下だけど、もうあの頃の私じゃないよ」

きゅっとダイゴの口元が硬く閉まる。
眉間にシワを寄せて辛そうな切なそうな顔をするもんだから、つられて眉が下がる。私は貴方の負担になる為に旅に出たわけではないし、そんな顔をして欲しくてさっきの言葉を発したわけではない。


「私、貴方が好きよ」

「え」

「コンテスト制覇して育て屋始めて、こうやって綺麗なドレス着てお酒飲んで、貴方に恋してる。ね、立派な大人でしょう?」

「...でも」

「なぁに、色仕掛けでもしたらわかってくれる?」





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