「いつもなのかい?」

溜め息混じりに聞こえてきた声に私は彼を見上げて首を傾げた。何故そんな不服そうな顔をしているのだろうか。

「ミクリ?」

さっきの彼の名を口にするとそうだと言わんばかりのその顔。
自分が紹介してきたんじゃないか、呆れながらも笑うと彼はキッチンの方へと歩き出した。
そういえば丁度用意していた珈琲が溜まる頃だ。


「ダイゴが来てない日はいつも顔を見に来るよ」

「そうか」


珈琲を淹れたマグカップを2つ持ったダイゴは複雑そうな顔をしつつ、椅子に座った。そしてテーブルの真ん中にある砂糖とミルクに手を伸ばす。自分の分には角砂糖をひとつ。私の分にはミルクと角砂糖ふたつを入れて器用にスプーンでかき混ぜた。香ばしい良い匂いが鼻をくすぐる。
そういえば、いつの間に私の好みを覚えたんだろうか。


「ありがとう」

自分も椅子に腰掛け、珈琲を口に含む。
うん、今日も美味しい。流石ダイゴブレンド。

「ナミ、デートしようか」

「ん″っ…げほっ…」

突然彼から溢れた言葉に噎せる。
いきなり何を言い出すのだろうか、この男は。

でもこの男、癪だけど顔は良いし家柄も良い。となるとたくさんの女に言い寄られていてもおかしくは無い。縁談の話もミクリからよく聞いていたし女性経験があってもいいだろう。デートに誘うなんて彼にとって挨拶みたいなものなのかもしれない。


「(それでも、アッサリ誘われるのは嫌だなぁ、、)」


自分で考えてから少ししょんぼりする。
離れていた期間が長かった故、彼の知らない一面もあってそれを見せつけられている気がして。幼馴染なのにな、なんて悲しくなったり悔しくなったり。
本当に乙女心というのは複雑で厄介な物だと実感する。






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