仲間入りと再会
「す、凄いね……」
「なんか最先端って感じだね。」
中学生がきょろきょろと辺りを見渡しながら16面中央コートに集まってくる。
私はそれを建物の中から見ていた。
「…おや、集まったようですね。」
『随分カラフルだこと。』
「貴女が言いますか。」
久々にこの人に突っ込まれた。
「さぁ、行きますよ。」
『……はぁい。』
気分が乗らない私は間抜けな返事をして、建物からでた。
─────────────………
「今回…韓国遠征で1軍20名が不在の間、2軍246名の合宿に中学生選抜を50名加える事となりました。」
───1軍。
私も全員には会ったことはないけれど、No.1からNo.10の選手は桁違いに強いと聞いた。
「高校生の諸君にとっては不服かもしれませんが近年中学テニスもレベルを上げてきていると聞いています────────」
けれど、中学生も桁違いに強い。
この合宿、面白いことになりそうだ。
「諸君っ!!互いが切磋琢磨しU−17(アンダーセブンティーン)日本代表の底上げを目指しましょう!!」
黒ベェ──戦略コーチの黒部由起夫(クロベユキオ)は声を上げた後、ちらりと私を見た。
『(……何?)』
「ただし、監督から伝言があります──────────300名は少々多すぎるようですよ。」
黒ベェの私を見た意味がわかった。
300名は多すぎる。
だから───────────
「ボールを250個落とす。取れなかった46名は速やかに帰れ、と。」
黒ベェの言葉と同時に空から沢山の黄色が落ちてきた。
「…貴女もですよ。」
去り際にコーチが私に囁く。
『分かってますよ。……ホラ。』
白いジャージのポケットから取り出したのは黄色いテニスボール。
先程、中学生にバレないように数個取ってきたものだった。
「さすが瞬速ですね。」
『瞬速なんかじゃないですよ。』
笑いながら去っていくコーチを見つめ、人が悪いななんて思いながら、カラフルなジャージに目をやる。
どうやら、中学生はみんなボールを取っているようだ。
そして、取れなかった高校生は…
「ゴラァ〜ッ中学生共っ!!1人で何個もボール取ってんじゃねーよ」
1人で何個もボールを取っている中学生に八つ当たりしているようだった。
『……餓鬼が。』
高校生にもなって、恥ずかしい。
「ボールを取れなかった方々は監督の意向通り速やかに帰宅しなさい!以上です───」
そんな声が掛かっているにも関わらず、帰る気はないらしい。
「試合だ…テニスで決着つけようや」
帰るどころか、試合を始めるだと。
『(中学生が、負けるわけないけどね。)』
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