仲間入りと再会
「………はぁ、」
目的地へ向かう途中、バスの中。
俺は今日何度目になるか分からない溜め息をついた。
「どうした、幸村。」
そんな俺に気付いてか、黄色いジャージを身にまとった老け───────真田が声を掛けてきた。
「んー、藤咲さんが来なくなって1週間経ったなーって。」
藤咲菜摘、テニス部のマネージャーになってくれた柳の幼馴染が部活…いや、学校を休むようになってかな1週間。
俺達、立海大テニス部のレギュラーはある合宿に招待された。
でも当然、そこには藤咲さんの姿はなく。
大好きなテニスが出来ることは嬉しかったが、彼女の事を好きな俺は、少し萎えていた。
「今日から合宿だっていうのに……(さらに逢えなくなるな……。)」
「確かに、最近は顔を見ていないな。たるんどる!」
「フフ、何がたるんでいるのかな?」
この老け顔、意味が分からないんだけど。
藤咲さんのどこがたるんでいるのかな?
ていうかムカついてきた。お仕置き、だね。
「っ、幸村落ち着かんか!」
「え?何、聞こえない。」
「ぎゃああああ!」
この後、真田の断末魔と幸村の黒い笑い声がバスの中にこだまし、レギュラー陣は心で同じ事を考えていた。
「「「「「「(どんまい。)」」」」」」
───────────────………
その頃、合宿所では。
「中学生を50人?」
コーチ達が椅子に座り、会話をしている。
『正確に言えば51人です。』
そんな中、少し低めの女の声。
訂正した後にガットを触っていた手を止める。
「ん?51?」
長身の男は首を傾げてその女を見た。
『……私を忘れないで下さいよ。』
「ああ、貴女も中学生でしたね。でも貴女はコーチでもありますから……。」
『分かってますよ。相手が男でも、負けません。』
「そうですか。」
『底上げする為に、3番に居るんですからね。』
彼女は少し首を傾げてから口角をクイッと上げる。
彼女の笑みにコーチ達は思わず笑みを零した。
「(どうやら、間違いではなかったようですね。)」
「(私たちが、選手兼コーチとして、)」
「(男子のU−17代表合宿にスカウトしたこと。)」
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