序2



「ったくケツの青いガキンチョがいっちょまえにハーレー様なんか転がしてんじゃねぇぞって話です。あれは酸いも甘いも噛み分けつつ少年の心を残したおじさまが乗ってこそその真価が発揮されるものであって、君達みたいなDQNボーイなんかには過ぎたシロモノです。それに何?無免許?速度超過?道交法舐めてます?それとも遠回しに自殺願望?160kmでガードレールに突っ込んだ方とか、トラックに200m引きずられた方の写真見ます?君達ああなりたいの?ねえ?どう?どうなの?」

「・・・・・・その辺にしておいてやれ西東。本気で泣いてるぞそのガキども」

「えー。この程度で泣くような脆弱メンタリティはいっそ早いうちに叩き折っとくのがいいと思いますけど」


すぱぁん。すぱぁん。連続でボードを弾いて少年達を威嚇する京を苦笑で制して、御子柴はちらと窓の外に目をやった。彼らの乗るパトカーの少し前方にはひしゃげた鉄の塊が転がっている。
元は少年の乗る深紅のハーレーであったそれが京の操るパトカーとのデッドチェイスの果てに今の形に変わるまでの課程を思い出して、御子柴は胃の辺りがキリキリと痛む思いだった。


(始末書何枚書けばいいんだ・・・)

「それには同意するがお前のやり方だとトラウマも刻まれるわ・・・・・・ほら、クソガキの説教はおっさんに任せて、お前は本部に応援要請と保護者に連絡してこい」

「はーい・・・。君達、補導じゃ済まないよ。検挙だからね検挙。経歴にがっつり傷付くよー覚悟しときなねー」


にっこり。最後に笑顔で止めを刺して、京はひらりと車を降りた。後ろ手でドアを閉めながら、器用に無線を操って本部に連絡を入れる。一通りの手続きを終えて大きく息をついた京の短い髪を、海からの風がすくい上げた。

夏の夜は短い。時刻は午前4時、紫色に染まった東の空から差す淡い光が、車の傍ら京の姿を浮かび上がらせる。

濃紺と群青の中間の鮮やかな青のタイトスカートに、薄青の半袖シャツと白手袋の装い。心臓の上で輝く旭徽章と制帽が、京の身分を物語っている。

姓を西東(さいとう)、名を京(みやこ)。姓名通して西東京。一度聞いたら忘れるかもしれないが、一目見たら決して忘れることはできないであろう名前の彼女は、警察庁配下の公務員−−婦警である。所属は所轄の南湾岸署、階級は巡査部長。
昨年交番勤務期間を終え、この春新設されたばかりの南湾岸署に転属して3ヶ月弱。車好きが高じて高まった運転技術を買われて配属された交通課で、自動車警邏隊に紛れてのパトロールと交通整理に明け暮れていた彼女に与えられた初の大仕事、それが今日の暴走族一斉取り締まりの殿(しんがり)だった。



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