今、思い出してみればずいぶんと可愛らしかったなぁと思う。そんな可愛らしい時期もそう言えばあったんだよね、と今の景吾を見ると懐かしく思う。

今じゃ、そんな面影もないし、どちらかというと可愛らしいよりもちょっと小憎たらしいって表現がよく似合う。自信家で俺様で、そしてだいたいのことはそつなくこなし、水準よりも上回るとか…うん、普通ならない。それが出来てしまうのが、跡部景吾だ。

景吾の家でのんびりしながら、寛いでいる私の手元には小さい頃の私たちのアルバムがあって、懐かしいなぁと思いながら当時を振り替えれば思わず笑いが込み上げてくる。

「何笑ってやがる?アーン?」

「いや、この写真見てたら思い出しちゃって」

「アーン?」

「ほら、景吾が花冠作ってくれたのを見て私も真似して作ろうとしたけど失敗したじゃない?その時の写真見てたら、なんだか可笑しくて」

そう言えば、ああ、そんなこともあったなと返す景吾に、懐かしいよねと私も返す。そうそう、確かこの時に初めて景吾に告白?いや違うかな。プロポーズされたんだよね。なんて思い出していたら、隣にいつの間に座ったのか、景吾がいて、タイミングよく私が思っていたことを口にした。

「そう言えば、この時だったか。名前にプロポーズしたのは」

「うん。あれ、覚えてたんだ?」

「この俺様が忘れるわけねーだろう。確か、庭に咲いていた花を指輪に見立ててやったんだったな」

「そうそう。あの時はびっくりしたけど、嬉しかったの覚えてるよ。まだ私も景吾くんって呼んでたなぁ」

「そうだったな」

ふと小さく笑みをこぼして、優しげに細められる瞳を見ていたら、かち合って正面から笑みを向けられる。し、心臓に悪いよ。もう!

「どうした?見惚れたか?」

赤くなる頬を隠すように顔を逸らせば、隣からは笑い声が聞こえてきて、なんか悔しい。

「おい、拗ねるなよ」

「拗ねてないですぅー」

「それのどこが拗ねてないんだ?アーン?ほら、手を出せ」

なんだと思いながら、右手を差し出せば、バカ逆だと左手を取られる。ゆっくりと薬指にはまるシルバーリングに、まさかと咄嗟に顔を上げて見れば、口角を軽く上げる景吾と視線がぶつかった。

「まだ少し早いがな。改めて予約だ。本物はまだ先になるだろうが、俺様の気持ちだ」

受け取れと自信満々に言い切った景吾に思わず笑みがこぼれた。小さい頃にした時のように指輪をしたあとに額をコツンと合わせて誓いの言葉を口にする。

あの日、あの時と同じ言葉と共に合わせた額と薬指の誓いを違えることはないだろう。



それではもう一度約束を
(名前は俺様のフィアンセだ。いいな?)(わかった!景吾、約束ね)(ふ、当たり前だろう?幸せにしてやるから覚悟しな)(期待して待ってる)



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