高校時代の知り合いと再会する場所って、だいたい同窓会とか、学校行事とかだよね。例えば、学生時代に付き合っていた彼と再会する場所もきっとそんな場所で、昔はああだったとかこうだったとか話して終わり。学生時代の恋愛なんてそんなものじゃないかな?だから、

『たまたまぶらついてた並盛ですらない商店街で、ばったり再会するとか、しかもそれが元彼とか、どんなフラグ?』

真顔でこんな質問をしてしまっても可笑しくないよね?
私はなんとも言えない気持ちで目の前の…高校時代に付き合ってた沢田綱吉に問いかけてみた

「俺だってびっくりしてるんだから分かるわけないだろ」
『じゃあなんで今、私達は喫茶店で座ってるのかな?』
「それは、たまたま再会したのが喫茶店の前だったから…成り行きで?」

軽く首を傾げて笑みを浮かべた沢田を見て真面目に考えてた自分が馬鹿馬鹿しくなった。溜め息を一つ零しながら椅子に深く腰掛けた。

『なんかさ…沢田、変わったよね。成り行きで軽く誘っちゃう奴だったけ?昔はもっとなよなよしてたよね』
「高校の時はまだ、しっかりしてたと思うけど…」

中学時代はあれだけどさぁ…とかぶつくさ言いながら沢田はブラックコーヒーを口に含んだ。
彼が変わったところはいろいろあるようだ。例えば、今口に含んだブラックコーヒーだってそう。当時、私は沢田が家に来ると毎回コーヒーを出していた。沢田はミルクと砂糖を入れても飲み切ることができなかった。それなのに、私が準備したものだからと一口は必ず飲んで顔が歪むのを押さえてた。その姿が面白かったから私はコーヒーを出すことを別れるまでやめなかった。

『コーヒー、飲めるようになったんだね。しかもブラック』
「仕事でね…徹夜とか多いからさ眠気覚ましに良く飲むようになったんだ…」
『なるほどね、確かに徹夜とか多いとブラックでも飲めるようになるよね。それに、一応昔から飲んでたし?』
「一応って言うか、まぁおかげさまで、あの時の特訓はしっかり生かされてるよ」
『特訓って、大袈裟だなぁ〜!』
「あれは特訓と変わらないって!毎回、出てくるし…苗字さんは面白がってたし!」
『あはは!隠してたつもりだったけどやっぱバレてたんだ!』
「あれで隠してたの?バレバレだよ」

沢田とこんなに会話をするのも別れて以来だからとても懐かしい。いろいろ蘇ってくる思い出と一緒にあの頃の気持ちが戻ってきた気がする。終わってしまった恋だけど、蘇る気持ちは心地よくて少しくすぐったくてあの頃の自分が帰ってきたみたい

『…そういえばさ、笹川さんとは今でも続いてるの?』

気持ちのいい心情の中にはやっぱり、少しの未練もある。私達が今も関係を続けることができなかった理由のその後はどうしても気になってしまった。

私達が付き合うきっかけは、私の一目惚れと思い付きからの勢いだった。好きだと思ったその日に告白して、その日に返事を貰ったのが始まり。
そんな、早かった始まりだったけど、終わり方も同じように早かった。
付き合って2年半が経った高校3年生の冬だった。よくある別れる理由で、よくある現場…学校のマドンナ笹川さんと沢田が抱き合っている場面を見てしまったのだ。沢田と知り合ったのは高校だったこともあって昔の彼は知らなかったしあまり気にして居なかったけど、中学生の時から笹川さんのことが好きだったんだって誰かから聞いて、私は知ったその日に沢田に別れを告げた。あんな場面を見てしまったら身を引かざる負えないと思う。返事は始まりと同じ、その日のうちに返ってきて関係は終わりを告げた。

思い出して、少し気持ちが沈んでしまったけれど始まりも終わりも自分で作ったものだったから諦めはすぐに付くことができた。だから、どんな結果であろうと私は…

「続いてるって言うか、昔から仲のいい…友達だけど?」

なんとも、思わない…思わない、つもりだったのに私は沢田の返答に驚いて思わず立ち上がってしまった

『どういうこと!!友達!?嘘でしょ!だって、私と別れたのってそれが理由だったはずだよね!?』
「お、おい!声でかいだろ!あーもうっ…とりあえず出よう」

声を張り上げたが為に店内に居たお客さんの注目を浴びた。それに気づいた沢田は慌てて私の手を掴んで、店の外へと引っ張った。

『ちょっと!どこ行くの!?』

外に出て、そのまま走り出した沢田に引っ張られているうちに内に突然立ち上がって叫んでしまったことへの後悔やなんで、あんな行動をしてしまったのか考えることができた。
そして少し、ほんの少しだけ、今もう一度やり直したいと言えばうまくいくんじゃないかと改めて自然と絡み合っている手を見て思った。何故かは分からないけれど、笹川さんと付き合ってないならまだ私にもチャンスがあるんじゃ無いかって。
ねぇ、私、沢田と再会して…あの時の想いが溢れてるみたい

(『ねぇ、綱吉…私達がちゃんと大人になったら絶対結婚しよう!どんなに離れてしまっても必ず!約束ねっ!』)

高校時代に冗談半分で言ったあの言葉やその時の風景が浮かんできた。2人で指切りをした風景は今では古いフィルムのワンシーンと化している。
沢田は今でも覚えているだろうか
願望は浮かんですぐに消えた。







喫茶店から出て、少し走った先にあった小さな公園で彼は立ち止まった。手はまだ繋がったまま。

『突然走り出して、、なんなの、もう』

「あのさ、もし、あの時俺が別れたく無いって言ってたらさ苗字さんはどうしてた?」

息を整えていたとき聞こえてきた言葉をすぐに理解することができなかった。息を整えて、返事をしようとしたら見計らったかのように沢田はたたみかけて来た。

「本当は…今日会ったの偶然じゃないんだよね」
『…はっ?えっ、どういうこと、、』
「やっと、向こうも落ち着いたしやっぱり置いて行ってしまったものを忘れることはできなかったから必死に、探したんだよね。そして、見つけた」
『探したって…嘘、そんなわけ…』

また、さっきまでの喫茶店でみたいに冗談めかしに話してるんだと思って顔を上げてよく見たら、そこにはあの時から随分と大人びて、昔から変わらない真っ直ぐな目があった。混乱する頭に次から次へと降りかかる言葉や、その視線に私は少し期待した。ちゃんと見つめ返したら沢田は照れ臭そうに、笑った。これも変わることがなかった私の大好きな人の特に大好きな表情。

「理由も言わずに離れたから、本当、今更かもしれないけど…それでも俺を少しでも想ってくれて居たなら、俺はあの約束を現実にしたい。だから、」

次に来る言葉を私はしっかり頭に刻んだ。悲しみで染まって居た古びたフィルムの記憶達は色鮮やかに蘇り、当時のような甘酸っぱい気持ちで胸がいっぱいになった。

「ねぇ、名前。俺とあの時の約束を…実現させてくれませんか?」

『突然の名前呼び、反則だって…やっぱ綱吉、変わったよね』

胸から溢れた気持ちは雫となって流れた。雫の意味、貴方に伝わってますか?
勝手に決めて、勝手に待たせた分いろいろ言いたいことあるし、文句はいっぱいだけどとりあえず、
私は今、とても幸せです。

どんなに月日がすぎようとも


(俺は一度も君を忘れたことは無いよ。コーヒーだって、君と居る気がして好きになった。危険だと置いて行ってしまったことは今でも後悔しているし、別れは君を傷つけてしまったから、君に会うのはとても怖かった。でも、この想いはいつまでも変わることは無い)


「#エロ」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -