最終試験開始
《これより会長面接を行います。受験番号の呼ばれた方から部屋にお越しください。》
次の日の朝、起きて身支度をしているとこんな放送が入った。
(会長面接?ネテロさん、次は何やるのかしら。)
最終試験開始
[Q注目している相手と戦いたくない相手は?]
44番:ヒソカ
「99番、405番◇あぁ、あと369番かな★」
「405番だね◆今はまだ戦いたくない◇」
53番:ポックル
「404番だな。見る限り一番バランスがいい。まぁ、その点では369番もか。」
「44番。正直、戦闘ではかなわないだろう。」
99番:キルア
「ゴンとフレイヤだね。あ、405番と369番。」
「53番かな。戦ってもあんまし面白くなさそうだし。」
126番:エレフ
「369番。」
「あー...っと、こいつ。44番。」
294番:ハンゾー
「44番と369番だな。44番はとにかくヤバイ。369番はその強さに驚かされたからな...」
「もちろん、44番と369番だ。」
301番:ギタラクル
「99番、369番。」
「44番、369番。」
403番:レオリオ
「405だな。恩もあるし、合格して欲しいと思うぜ。」
「そんなわけで405番。あとは369番だな。敵わないのは分かってるが・・・なんか、刃を向けちゃいけねぇ気がしてな。」
404番:クラピカ
「いい意味で405番、悪い意味で44番。・・・後は、369番だな。」
「・・・・369番とだけは、戦えない。」
405番:ゴン
「44番のヒソカかな。色々あって。」
「う〜ん…99・369・403・404番の4人は選べないや。」
――コンコン。
「受験番号369番です。」
『うむ、入って良いぞ。』
「失礼します。」
そう言って目の前のドアを開ける。
相変わらずの和風な部屋に、ネテロさんがお茶を飲みながら座っていた。
「待たせたのぅ。まぁ、楽にせい。」
「はい。」
目の前に腰をおろしすとマーメンさんがお茶を出してくれる。
彼にお礼を言い、私は改めてネテロさんと向き合った。
そしてネテロさんが口を開くより先、私は疑問に思ったことを口にする。
「――で、敢えて私を最後にしたのは何か理由があってのことなのでしょうか?」
そう、301番ギタラクルさんの後は本来であれば私が呼ばれたはず。
私もそのつもりで準備していたのにレオリオが呼ばれた時には間抜けにも口をポカーンと開けてしまった。
「ほっほっ。特に理由はないんじゃがのぅ。
なに、お主とは茶を飲みながら少し長話をしたいと思っただけじゃ。」
絶対にそれだけじゃない、と内心思ったのはネテロさんにもバレているだろう。
コホンと一つ咳払いをしたネテロさんは、まずは本題とばかりに話を切り出した。
「最終試験参考の為に三点程質問をさせてもらう。
まず、ハンター試験を受けた理由は?」
最終試験の参考って...本当に何するんだろう、と疑問に思いつつ私は至って簡潔に受験理由を述べた。
「会いたい人達に会いに行くためです。」
「ふむ...それは、危険度Aクラスの賞金首集団に、かのぅ?」
「ーーー!」
ネテロさんの言葉に目を見開く。
どうしてそれを...と疑問を口にするより早く、ネテロさんはその答えを述べた。
「お主の師匠のビスケはワシの弟子でもある。」
「・・・なるほど、師匠が話したんですね。」
「うむ、奴を悪く思わんでくれ。あれでもお前さんの境遇に悩んでずっと答えを出せずにいたんじゃ。
ビスケとしてはそんな危険な奴らの所に帰ってほしくはない。じゃが、お前さんが余りにも純粋に彼等を慕い求めておったらしいからのぅ。
何が一番いいのか、あの時にフレイヤと出会った事にどんな意味があるのか、どう育てていけばいいのか...
自分の子すら持ったことのないあやつが必死に頭を唸らせていたわぃ。」
その時の事を思い出しているのかほっほっと微笑ましく笑うネテロさん。
しかし、ネテロさんとは逆に私はその言葉に胸が締め付けられた。
(ビスケ・・・)
ビスケが私にくれた言葉はたくさんある。
だけどその中のたった一つでさえ彼等を・・・幻影旅団の皆を悪く言う言葉は無かった。
「感謝こそすれ、悪くなんて絶対に思いません。
ビスケは私にたくさんの大切な事を教えてくれたんです。
私は彼等に会いに行きます。でも彼等と同じ生き方は絶対にしません。
ビスケと・・そして彼等が私に教えてくれた“生かす”ということを大切にして生きます。」
そう真っ直ぐな目でネテロさんに言えば、ネテロさんは目尻を下げゆっくりと頷いてくれた。
「うむ、それを聞いて安心したわぃ。」
「あの...やはりネテロさんにとって幻影旅団は注視すべき対象なんでしょうか。」
「ほっほっ、まさか。散々やっているようじゃが所詮ひよっこ。視野に入れるまでもないわ。」
「な、なるほど。」
この時、改めてネテロさんの強さやまだまだ知らない世界が沢山ある事を実感した。
「さて、2つ目の質問じゃ。この中で注目している相手は?」
サッと目の前に並べられた最終受験者のカード。
私は全てにさっと視線を巡らせ、その中の一人を指した。
「・・・404番。」
「ほぅ。理由は?」
「予想に過ぎませんが...恐らく彼は幻影旅団を憎んでいるから。」
「・・ふむ。では最後の質問じゃ。この中で戦いたくない相手は?」
その質問に迷いはなかった。
私は再び同じカードを指す。
「404番です。」
「・・・同じ理由かの?」
「私は、どんな理由があれ決して彼...いいえ、この四人に刃は向けないと決めたんです。」
そう言って私はゴン・キルア・レオリオ・クラピカのカードを指し示した。
「ふむ、分かった。質問はこれで終わりじゃ。
・・して、最終試験じゃが。お主と126番は魔法を使う事を禁止とする。勿論念の使用も禁止じゃ。」
「分かりました。」
「126番にも伝えてもらえるかの?」
「ぇ、彼に伝えてないんですか?」
「うむ。ちと伝え忘れでの。」
ほほっと笑うネテロさんに、絶対に私に押し付けた、と思わずジト目で見てしまう。
彼はそんな私からツイと視線を外すと、もう下がって良いぞ、と言った。
私は一つ礼を取りドアに手をかけると、ふと足を止めネテロさんを振り返った。
「ネテロさん。もし私が彼等と・・幻影旅団と同じ生き方をする為に会いに行くと言っていたら、私を不合格にしていますか?」
探るように真っ直ぐと、だけど何処か縋るような気持ちでネテロさんを見る。
彼は髭を一撫ですると、普段通りの表情で何でも無いことのように答えた。
「それもまた、お主の選択。歩む人生よ。
そこにワシは口出し出来んし、それで不合格にするようなこともせん。
ただワシと同じ道を歩く事が今後無くなるだけの話じゃ。」
「・・・そうですか。」
その言葉に私は曖昧に微笑んで部屋を後にした。
パタンとドアを閉め溜息を吐く。
(敵わないなぁ、ネテロさんには。)
選ぶのは、誰でもない私。
色んなモノを天秤に掛けて選択していく。
きっと人生はその積み重ね。
(何者も私を縛ることは出来ない。私の意思は、私のもの。)
それは自由に思えて、だけどとても苦しいことだわ。
(道が決められていたら。選択肢が無ければ。・・・楽だったのかしら。)
そこまで考えて、私は力なく首を横に振った。
マリオネット
「しっかりして、ルーエル。操り人形になるのはもう嫌だと言っていたでしょう。」
ふぅと息を吐き、私は軽く頬をパチンと叩く。
そしてネテロさんの伝言を伝えるべくエレフの元へと向かった。
* *
「さて、受験者の諸君、ゆっくりと体を休めることはできたかな?」
三日目の朝。
受験者は家具も何もない広い部屋へと集められた。
そして同じ場所にサトツさん、メンチさん、ブハラさんもいる。
ネテロさんの隣には布をかぶせたボード。
あそこに最終試験項目が書かれているのだろうか。
全員がネテロさんよりもそのボードに目を向けている。
「最終試験の内容じゃが、最終試験は一対一でのトーナメント形式にて行う。
トーナメントの組み合わせは、こうじゃ。」
そう言ってかぶされていた布が外される。
全員が、息を呑んだ。
それは私も例外ではなく――・・・
(これは、偶然?それとも・・・)
狙ってやったのだとしたら、あの面接の意味は何だったのか。
それに、
(ネテロさんは、一体どこまで知っているの?)
余りにも皮肉なそのトーナメント表に、私は固く拳を握り締めた。
最終試験が、始まる―――。
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