付き合いは最後まで



襲われた女性警官を助け潔白を証明されたアレンくん。

彼の戦いの中で明らかになったアクマというもの。
その正体。
千年伯爵という言わばボスの存在。

そして、少しだけ見れたアレンくんの過去。

「ハンマーで弟子を殴って逃走なんて
随分ユニークな師匠だね」

ガタッガタン!

盛大にずっこけるアレンくん。

そのせいで乗っていた荷馬車の荷が少し崩れた。

「なにやってるの」

『な…なんで師匠のことを』

「さっきチラッと回想がね」

『……なるほど…
僕の世界が漫画の中だって信じざるを得なくなってきましたね。
…と、いうことは
このまま物語が進めば
いつかは僕の過去が全て知られてしまうんですね…』

声なんて聞こえないし
此方に背を向けているから分からないけど
彼が悲しそうにしているのはなんとなく分かった。

そんなアレンくんの背をしばらく見つめ

「……ごめん。
嫌ならもう読むの止めるよ。
誰だって嫌だよ。
自分の過去知られるなんて。
…ここでお別れだね」

『いえ、良いですよ。
まだ割り切れませんが覚悟は出来ます。
せっかく僕の物語に興味を持ってくれたのでしょう?
最後まで読んで下さい』

「…そう?無理してない?」

『ええ、大丈夫です』

振り返って笑いかけてくれた笑顔はかなり無理していたと思う。

その時はぼんやりと
余程知られたくない過去なんだろうなって思っていたけど
割と早くその真相を知ることが出来た。

「(そっか…義理の父親を自分の手で…)」

アクマになった親友を助けたい一人の少年。

その少年とアクマの親友を救済する為にアレンは戦っていた。

その時描写された回想シーン。

「ねぇアレンくん」

『はい?』

少年と別れ再び旅に繰り出すアレンに声をかける。

「本当に良いの?……本当に?
誰にも知られたくないんじゃないの?」

『…………ええ。
もう、仕方ないことですから』

「そう…
なら、最後まで見届ける。
それが君に対しての礼儀になると思うから」

『……ありがとうございます』

「幸薄いって言ってごめんね」

『はは…気にしてませんよ。
それにあながち間違ってませんし』

「気休めだけどこう言っておく。
『いつか良い事あるよ』」

『気休めでも嬉しいですよ。
ありがとうございます』

にこりと微笑むその笑みは
先程と違って自然な笑みだった。

それを見て少し安心し
私も自然と笑みを浮かべる。

仰向けに寝そべっていたベッドから体を起こして伸びをすると

「さて、私そろそろ明日の用意とご飯食べなくちゃ」

『明日の用意?』

「これでも女子大生なもので」

『え?女子?…え!?女性!?』

「えっなに。なんか失礼なんだけど」

『すっすみません!
女性にしては声が低いなって』

「どうせ可愛い声じゃないですよ」

『うわああ!すみません!ほんとすみません!!
そういう意味じゃなくて!』

「年下にこんなに侮辱されたの初めてだわ」

『年上!?
えっちょっ…
あ、す、すみません。何でもないです』

紙面を見れば、街中で大声を出していたようで
不審な目を向けられているアレンくんの姿。

私はクッと笑って

「やーい。ざまみろ」

『…っいい性格してますね…透さん…』

「それ程でも」

誉めてませんからね。
とアレンくんから突っ込まれる。

「変に気取ってないからさ
気さくで良いよ。
女の皮を被った男だと思えば」

『それはちょっと…
まあ…親しみやすい方ではありますね』


ある意味共同生活
「とりあえずご飯食べてくる」
『あ、一緒に食べません?
僕もお腹空いちゃって』
「独り言喋りながら淋しく食事?
友達できないよ?」
『お互い様です』

 


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