敵の存在



色々話は拗れるものだ。

アレン・ウォーカーと名乗った主人公の少年と私は
互いに自分に起きている状況に頭がついていけない。

とりあえず彼は人気のない裏路地に入り込んだ。

どうやら彼側の第三者から見たら
彼は独り言をブツブツ言っているように見えるらしい。

それはこっちも同じだ。
ただ本という向かって言ってる相手がいるだけで。

……自室で本当に良かった。

『あの…透さん、でしたっけ?』

「はい」

『本当に幽霊じゃないんですね?』

「私はちゃんと生きてるよ」

『でも姿が見えない…』

「アレンくん…で、良いかな?
君も私から見たら動く白黒の絵だよ」

『ええ!?』

「ごめん。全然面白くない」

「ダジャレじゃなくて!
本当に!?
僕、動いてるとはいえ絵なんですか!?」

「うん」

『声は!?』

「聞こえない」

『…僕の今の服の色は?』

「分からない。白黒だし」

『……………』

「……………」

『……すみませんが、もう一度詳しく状況を教えて下さい』

「私が今日買った漫画を開いたら君が動いていた」

『……ごめんなさい。
全っ然分かりません』

「まあ、その…なんて言うか
アレンくんの世界は漫画の世界ってこと…」

『そんなのおかしいですよ!
だって僕はこうして生きてますし
心臓も動いてます!』

「そう…言われても…」

『貴方の世界こそ漫画の世界では?』

「それはない」

『僕だって』

「……………」

『……………』

埒があかない。

とりあえず私は彼にこう言った。

「ティムキャンピー、猫に喰われてるけど大丈夫?」

ハッと振り返った彼だが既に時遅く
丸い球体は猫に丸呑みされ走り去る。

『まっ…ティム!!』

慌てて追いかけるアレンくん。

おお、凄い。
ちゃんと彼の背を追いかけるのか。
これは下手な映画より面白いかもしれない。
画面が単行本両面という狭さ、そしてカラーではないという所が欠点だが。

ネコは廃墟に逃げ込みそれを追うアレンくん。

どこまで不幸なのか
彼は偶然居合わせた警官らしき女性に捕まり
更には気絶した女性警官を好意で運んだのに容疑者として捕まる始末。

うん。大体分かった。

このアレン・ウォーカーという主人公はとことん不幸体質だという事が主に。

『…透さん、今失礼なこと考えてます?』

「君ってとことん不幸だね」

『思ってても言わないで下さい…』

ハアァァ…と深い深いため息をひとつ。

謹慎先の女性警官の家にお邪魔している彼。
なんとかティムを飲み込んでいるネコは確保しているようだが自由に動けない事に落ち着きがない。

「私がそっちに行けたら無実を証明できるのに。残念だね」

『ほんとですよ…
実在してるなら姿を現して助けて下さい』

「本の中に入れるわけがない」

『それは確かに』

「…?今アレンくんの左目が」

そして、ついに物語では必須の存在である敵が姿を現したのだ。


それはアクマというもの
「…宗教戦争?」
『僕はエクソシストです』
「ああ、除霊師」

 


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