7.誰かを救う心



「リナリー、ルシファーのオラトリオ(聖職者の歌声)ってどういう仕組みなんですか?
ただ歌えば相手の傷が癒えるんですか?」

「ルシファーが言うには心が必要なんですって」

「心?」

「そう。
アレンくんが人とアクマを救いたいという強い思いからクラウン・クラウンを進化させたように
オラトリオも心次第で強力になるみたい」

「どんな心なんですか?」

「『この人を救いたい』
ただそれだけを強く強く思わないと
オラトリオを発動出来ても癒やしの力はいまいち。
だから、アレンくんの血がほとんど抜けたような怪我や
ファインダーの内臓破裂したような大怪我はかなりの強い思いが必要なのよ」

「…………」

「助けたくて助けたくて仕方なかったんでしょうね。
アレンくんやファインダーの人のこと」






















――生きて…



















食堂を後にし、僕は眠ったルシファーを背におぶって彼女の部屋を目指す。

結局ルシファーは食事の途中で目覚めることはなかった。

残ってしまっていた山積みの料理は
もったいないので僕が完食した。

僕の背で規則正しい寝息を立てる彼女。

昨日リナリーからルシファーのイノセンスについて聞いた時
先日の治療中のぼやけた記憶の中で、一言だけ声掛けの内容を思い出した。

「生きて…か…」

誰よりも優しいくせに。

どうしてこの人はその事を隠そうとするのだろう。

歯がゆくて無意識に唇を噛む。

誤解され、嫌われてるのに
ひたむきに教団の人達を助けようとする彼女。

そんな彼女を守って、支えてあげなくちゃダメだ。

いつか

みんなと分かり合える日まで。

「というかルシファーは本当に僕より年上なんですかね…
この寝顔見てたらどうしてもそう思えない…」

背もリナリーより低いし
中性的だけど童顔だし

「本当は僕と同じか僕より下の子どもなんじゃ…」

「誰が子どもですか誰が」

「いだだだだだだ!!
耳引っ張らないで下さい!」

どうやら目が覚めたらしい。

後ろから僕の耳を思いっきり引っ張ってきた。

「そうやって意地になるなんてますます子どもっぽいですよ!」

「神田と安っぽい挑発でギャンギャン騒ぎまくってる君より大人です」

「どうしてそこで神田が出てくるんですかっ
というかいっつもケンカ売ってくるのはあっちです!」

「買う方も買う方です。
これだから似た者同士は」

「似てません!!
ルシファーこそ敬語やめてもらえますか?
僕とキャラ被るんですよ!」

「分かりました。
知ったことか」

「おいおい…
お前ら何の言い合いしてるんさ…」

呆れた顔をしたラビがティムキャンピーを連れてやってきた。

「聞いて下さいラビ!
ルシファーが僕と神田が…」

「ぐう」

「寝るな!!」

床に落としてやりたい!

背で寝ているルシファーを睨みつけていると
ティムがパタパタと飛んで肩にちょこんと乗る。

「なあ、そんなことよりアレン。
入団者見たか?
今日入った新しいエクソシストらしいんだけど
なんと双子らしいんさ」

「双子の入団?
兄弟でイノセンス適合者だなんてまた珍しいですね」

ティムががじがじと僕の髪をかじって遊んでいる。

「どっちも装備型らしいさ。
双子のエクソシストなんて珍しいから見に行ったんだけど、見つからなくてさー」

「まだコムイさんと色々話してるんじゃないんですか?
ヘブラスカの元でシンクロ率も調べなきゃいけませんし…
記入必須の書面もいくつかありますしね。
その内挨拶に来ますよ」

僕の背でやはり狸寝入りをしていたルシファーがティムを捕まえる。

だがティムは嫌がることなく大人しく捕まり
ルシファーはそんなティムをぷにぷにつついて遊ぶ。

そして「ふわあ」と欠伸し

「…アレン・ウォーカー」

「なんですか?」

「ねむい…です…」

「はいはい。
今部屋に連れて行きますよ」

「ハハハッ
じゃあオレも一緒に行くさ」

「え、ダメに決まってます」

「え、そうなん…?」

 


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