6.同じ思い



「長丁場になりそうって言ってたもんね。
ルシファー…お疲れ様」

僕におぶられて眠るルシファーにリナリーが優しく声をかけた。

「患者が眠ってしまったから
治療はあと少し残ってますね」

「あれだけ回復してたら多分ルシファーは治療しないわ」

「え?」

「この人、ある程度治療したらあとは自然治癒に任せてるみたいなの」

「そうなんですか」

「何でも、治療とはいえ相手の体を活性化させての高速治療だから
患者の体に負担がない事はないらしいの。
だから、自然治癒出来る程度まで回復したら後は患者に任せるって…
自然治癒中に十分な休息もとれるでしょう。
って言ってたわ」

「そこまで考えてるんですね…
やっぱりルシファーは大人だ」

「そうね。
こんなに優しいのに、誤解されて嫌われてるだなんて
やっぱり淋しいわよ…」





















「どうしたんですか?ルシファー
せっかく僕が分けてあげた食事が食べれないと言うんですか?」

「人間の胃の許容量を
遥かに超越した食事を完食できるわけがありません」

「僕は人間ですがルシファーに分けた量ぐらいなら
完食なんて余裕です」

「こんなの絶対おかしいよ」

「いいから食べて下さい。
あの治療から丸一日熟睡してたんですから」

「眠い…」

「知ってます。
って、寝ちゃダメです!
起きて起きて!」

こっくりこっくりと船を漕ぎ始めたルシファーの肩を掴んで揺さぶる。

頭がカクカクなりながら眠たげな目で

「それに治療って何のことです?
あのファインダーの怪我の治癒はドクターのお力であって
ただお手伝いしただけの私には何の関係もありません」

「はいはい。
分かりましたから食べて下さい。
口に押し込みますよ」

しぶしぶ食事を始めるルシファー。

その時、僕の横に怪我をしたファインダーの同僚と言っていたファインダーの方が現れた。

「エクソシスト様!
先日はドクターを手配してくださりありがとうございましたっ」

「あ…君はこの間の…
いえいえ。治療がうまくいって良かったですね」

「はい!
もうダメだと諦めかけていたのに、信じられないほど回復していて…!
こんなに嬉しいことはないですっ
本当にありがとうございます!」

「お礼なんていいですよ!
するなら…」

「はい!これからドクターにお礼を言ってきますっ」

彼女に、と言おうとしたらファインダーの方はにこやかにそう言った。

そして僕の横で眠そうにもぐもぐパンを食べているルシファーを見て

「偉そうな事言って結局何もしなかったらしいな」

「…………」

「能無しが。
役立たずって本当にいるんだな!」

「ちょっ…」

僕が何か言おうと立ち上がると、手首を掴まれる感じがして振り返る。

ルシファーが掴んでいた。

何も言わない彼女を見てファインダーの人はクッと馬鹿にしたように笑って去って行く。

席に座って彼女に体を向けると

「ルシファー。
君は何も間違ったことなんてしてないんです!
恥ずかしいなんて言ってる場合じゃないんですよ?
正しいことをして責められるなんて間違ってます。
ちゃんと主張するべきです!」

「ドクターと婦長、ナースに何もしていなかったと言え、と念押ししたのは私です。
その結果責められるなら仕方ないことです。
私の責任です」

「今からでも挽回出来ますよ!」

「それに私は感謝されたくて治療したわけではありません。
自分が治って欲しいと思ったから治療しただけです。
言わば自分の欲です。
だから、感謝されても困ります」

淡々と言いながら僕の手首を離し
もしゃもしゃとサラダを頬張る。

しばらく呆然と見ていたが
心の奥から湧き上がる気持ちを抑えられず

「僕だって…」

「?」

「僕だって、人とアクマ両方を救いたいなんて勝手な欲望です!
でもその欲で人とアクマを救えて、感謝されるならラッキーじゃないですか!」

「………」

「君は真面目すぎるんですっ
欲で人を救って何が悪いんですか!
もっと柔軟に物事を考えて…
って、人の話の途中で寝ないでもらえます!?」

 


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