3.弾かれ者



なんとか食事をしてくれたルシファー。

自分で言うのもなんだが
食べながら寝そうになるというまるで赤ん坊のような彼女を僕が必死に叩き起こしたおかげだ。

食事をしたおかげか少しはっきり目が覚めたようだ。

「アレン・ウォーカーが私をいじめます」

「いじめてません。起こしてるんです」

「声掛けじゃダメなんですか」

「君が声掛けで素直に起きれる人だったら
僕はどんなに楽だったでしょうね」

「………」

「この状況で寝ないで下さい?」

瞼を閉じかけた彼女の肩を激しく揺さぶる。

ハッと目を覚まし瞼をこすり

「部屋に戻って寝ます…」

ふらふらと立ち上がる様子を見るかぎり
これはどう考えても道の途中で寝てるだろう。

普通の人なら「寝過ぎだ。いい加減起きろ」と言えるのだが
彼女の場合はイノセンスの反動によるものだ。
僕が空腹に堪えられないよう、彼女も睡魔に堪えられないのだろう。

「部屋まで送りますよ」

「いじめっ子はお呼びじゃないです」

「途中で寝転ばれてたら皆さんに迷惑でしょう」

「似非紳士はお帰り下さい」

「口を閉じないと今この場で寝てもらいます。
安心して下さい。引きずって部屋に運んでおきますので」

「…………」

「本気で寝ようとしないでくれます?!
しかも立ったまま!!」

ぐらりと彼女の体がぐらつき、慌てて抱き止める。

ほ…本気で寝やがった。

食欲が押し寄せてくる反動も厄介だが
睡魔が押し寄せてくる反動は更に厄介だ。

何も出来ないじゃないか。

仕方なく背に担いで彼女の部屋へ目指す

「おい…あいつだよな…?
アレンの背にいる奴」

「ああ、エクソシストのくせに戦場にも行かず
ホームで寝てばっかりのぐーたらエクソシストだ」

どこからかそんな会話が聞こえる。

最近耳を刺すように
ルシファーの良くない噂は流れていた。





















「コムイさん、どうしてルシファーは戦場に行けないんですか?
彼女は医者顔負けの強力なヒーラーなんですよね?
だったら戦場に行って傷付いた人達の治療にあたってもらえば…」

「アレンくん。
以前ルシファーのイノセンスについてちょっとだけ説明したことあるよね?」

「…?はい。
確か…ルシファーの声が聞こえる全ての人が対象だと…」

「それは人間だけじゃなくてアクマも対象になるんだ」

「…!?」

「味方だけに都合良くってわけにはいかないみたいでね。
寄生型だし体内にあるから改造も考慮できない」

「…………」

「美しい透き通る声なんだけど
透き通りすぎる声なんだ。
だから、彼女のイノセンスは戦場には向かないんだよ」

「でも…!このままじゃ!
コムイさんは知ってるんですか…?
ルシファーが謂われのない噂を立てられて陰口が絶えないことを!」

「…………」

「僕は彼女の力で今回の任務でついた傷が癒えました!
あんなにも綺麗な『歌声』を無駄にするんですか!?」

「オラトリオ(聖職者の歌声)か…
ボクらが仕事で疲れた時によく歌ってもらったよ。
本当に綺麗な歌声だ」

「コムイさん…」

「アレンくん。
ボクでは力になってあげられない…
彼女のイノセンスの事は説明しているはずなんだ。
それをどうとらえ、どう思うかは個人次第…」

……不満があるのは仕方ないのだろう。

皆が命懸けで戦場に行って戦っている間
彼女は同じエクソシストなのにホームでずっと寝てるんだ。

頭では理解してても、心までは納得出来ない。

「出来る限りでいい。
君が力になってもらえないかな…?」

彼女が独りにならないように…

 


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