35.手を重ねて…



あれから数日後。

ルシファーの頭の怪我も良くなり
体調も整った。

彼女の帰還から陰口は激減した。

それはリナリーが咄嗟に放送スイッチを押し
教団内全てに彼女の本音が放送され
全て誤解だったと反省したようだ。

リナリーにその時の行動の真意を聞くと
どうやら反射的にやったらしい。

『みんなに聞かせなきゃいけない。
そんな気がして』
と言って…

そして今、ルシファーはコムイさんに呼ばれ室長室にいた。

「ポルックスとカストル…
2人を庇って、君のご両親は亡くなった」

「………」

「ごめんなさいルシファー…
私達がもっと早く間に合っていれば
貴女のご両親は亡くなることなかったのに…」

コムイさんとリナリー

2人の言葉を聞きながらどこか俯いた感じで
ただ、淡々としていた。

「……そうですか」

ルシファーが口を開いた。

「最期まで、お人好しだったんですね。
ほんと…変な所で勇気があるんですから、お母さんとお父さんは」

「ルシファー…」

「ありがとうリナリー、コムイさん。
教えてくれて。
リナリーは…何も悪くないです。
…ただ…」

「…ただ?」

「生きていて欲しかった…っ
自分達の命のことも、省みて欲しかった…っ」

ボロボロと彼女の目から涙が零れる。

小さく漏れる嗚咽。

痛々しい姿に
コムイさんは席を立ち、抱き締めた。

リナリーも涙を流しながらルシファーを後ろから抱き締める。

僕は何も言えず、何も出来ず

ただただ
泣き喚くルシファーを見守ることしか出来なかった。

幼い時に大好きな両親と離れ離れになり
それっきり、もう二度と会うことができない。

その喪失感と孤独感は
大好きなマナを失った僕にもよく分かる。

身が引き裂かれそうな程に。

コムイさんの白衣にしがみつくように泣くルシファーに
僕はどう声をかけられるだろうか。

言葉は見つからず、立ち尽くすのみ。

やがて僕は
室長室から出て行った。


















「傍にいなくて良いんか?」

談話室で塞ぎ込んでいたら
ラビが隣に座ってそう言ってきた。

「…なんて声をかければいいか、分からないんです」

元気だして、とも
辛かったね、とも

どれも違う気がする。

「ああもう
僕って、ほんと子供ですね」

何も思いつかない。

大好きな彼女になんと言えば
笑顔を見せてくれるのか…

「そんなん今更さ」

「…るさい」

「ガキはガキらしく
大人になるまで大人しくしてるさ。
そうすれば、いつか自然とリード出来るようになる」

『それに、ルシファーはああ見えてやっぱ大人さ』
と、ラビはそう言って何処かへ行く。

どういう意味だろう?

そう疑問に思いながらラビの背を見送っていると
反対側の隣に重みを感じた。

振り返ってみると

泣き止んだのか目の赤いルシファーがいた。

「……アレン」

「え…」

フルネームじゃ、ない。

「ありがとうございます。
…私のせいで、随分重いものを背負わせてしまいましたね…」

ポルックスとカストルのことだろうか…

「…気にしないで下さい。
助けると約束したのは僕ですから」

「それでも、背負わせたのは私です。
本来は…私が全て背負うべきだったんです。
私の罪で2人は…」

「ルシファー、そんなこと…」

「貴方が背負ってしまったのなら
私が崩れないよう支えます」

「っ!」

手袋越しから
暖かい体温。

見れば
手を重ねられていた。

更に、そっと肩に心地良い重み。

彼女の頭が乗っている。

「貴方が傍にいてくれるなら
私は何処にも行かない」

「ルシファー…」

「傍に、いてくれるんですよね?」

泣きはらした目で見つめられる。

僕は直ぐに重ねられた白い手を握り

「もちろんです」

夕日色の髪の頭に
優しく頭を寄り添う。

「傍にいます。
君が好きだから…」

「ありがとう…アレン…」

一筋だけ涙を零し、
優しい笑顔を見せてくれた。

そしてそのまま、泣き疲れたのか眠りにつく彼女。

そんな彼女に

僕は愛しさを込めて
髪の上から額に、軽いキスをしたのだった…


・END


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