34.イノセンスと双子の最期



「神田!ラビ!
下にルシファーが気を失ってます!」

異形な姿の双子を取り巻くようにいるアクマ達を倒しながら僕は叫ぶ。

「へ…?
まさかお前、歌止める為に殴ったんか!?」

「僕が女性にそんなことするわけないでしょう!
頭の出血で気を失ったんですっ
でも、一人にするのは危険です。
どちらか彼女の傍にいて下さい!」

「…お前が傍にいなくて良いんか?」

「………
僕は、2人を助ける約束を彼女としましたから…
双子を助け、壊すのは僕じゃないといけないんです」

人が話してるにも関わらず神田は構わずアクマを踏み台し
そして咎落ちした双子に攻撃する。

人の話聞けよ。

それを見たラビがため息をつき

「わーかった、分かったさ。
オレがルシファーを守るさ。
ユウだって一時とはいえポルックスとカストルの兄弟子だったんさ。
可愛い弟分助けたいよな〜」

「行くぞ六幻」

「どわ!?
ちょっこっち向いて言うなって!!」

「勘違いすんじゃねぇ
仕事で斬るだけだ。
敵になったんなら斬る」

「そんなに斬りたいなら周りのアクマ達をお願いします」

「ああ!?なんだとモヤシ!」

「2人を助けるのは、僕だ。
ルシファーと約束したんです」

これだけは譲れない。

彼女が命を懸けてまで救おうとした2人を、僕が助ける。

真剣な顔で苛立っている神田を見る。

すると神田は更に苛つきを悪化させ
「チッ」と舌打ちを1つすると

「ヘマしやがったら一緒に斬るぞ」

「神田じゃないんですから大丈夫ですよ」

「なんだと…?」

「なんですか」

「ほらほら!!
戦いに集中するさ!」

今にも僕に斬りかかってきそうだった神田をラビが引っ張って行き
やがて彼は下にいるルシファーの元へ降りていった。

そして僕は双子と向き合う。

「カストル、ポルックス…」

スーマンの時と同じだ。

形状は多少異なるが
巨大な異形な姿となったものの心臓部分から
ポルックスの上半身が出ている。

ただ、スーマンの時と違うのは

ポルックスの中身は
アクマとなったカストル。

イノセンスからの攻撃に耐えつつ
イノセンスの暴走で周りを破壊する。

もし、このまま街まで降りて次々人を殺していったら
彼らは進化するのだろうか?

なんとしても
此処で止めないと…!

「カストル!ポルックス!」

声掛けに反応するわけがない。
もうアクマなのだから。

それでも…!

「そこから出してあげます!
もう少しだけ耐えて下さい!」

2人の傍に行き、張り付く。

スーマンの時は神に絶望した彼から拒まれ苦戦したが
声の届かない2人なら拒まれることもない。

僕はポルックスの両肩を掴み、なんとか脇の隙間に手を差し込んでそのまま引き上げようとする。

「っが!!」

スーマンの時と同じように
体中に電撃が走る。

「く…!」

重い…!

あの時のように僕の手を噛んでくれれば
まだ引っ張り上げようがあるのに。

今回は自分1人で引き上げないといけない…

「(力が……足りない…!)」

ギィアアァァアア!!

「っダメだ!イノセンス!」

ポルックスのイノセンスが双子を壊そうと取り込み始める。

取り込まれた途端
2人は破壊されてしまう!

なんとか体を引っ張り上げようとするが
ポルックスの体は沈むばかり。

ダメだ…っ
破壊するのは
彼女と約束した僕でないと…!

苦しげに叫ぶ双子。

容赦なく取り込もうとするイノセンス。

「っ…」

覚悟を決め、僕はポルックスの体から手を離し
退魔ノ剣を握った。

「ポルックス、カストル…
苦しいでしょう…?」

内臓された魂が

『壊してくれ』と泣いている。

『苦しい』と、もがいている。

イノセンスは2人の罪を贖わせようと
その命を貪ってゆく。

破壊される前に
僕が…

退魔ノ剣を、2人の頭上に切っ先を向けて持ち上げ

「今までありがとう…
楽しかったですよ」

だからせめて、安らかに…




「さようなら」




突き下ろす。

ポルックスの脳天から剣が刺し込まれ
途端、イノセンスに沈みかけていた体がピタリと止まった。

『……ア…アレ、ン…』

「…!?」

















『…アリガ、トウ……』

















イノセンスが

爆発したように辺りを白で埋めた。

 


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