31.そして破滅へ



「ルシファー!ルシファー!!
返事をして下さい!」

「ポルックス!カストル!」

通信がいきなり途絶えた。

ルシファーの歌声が消えたと思ったら
その直後聞こえてきた何かが激しく崩れる音。

それから全く音沙汰なく
僕は現地に向かって走る足を速めながら
バカみたいに彼女の名前を呼ぶしかなかった。

『アレンくん!到着まで時間は!?』

「まだ少しかかりますっ
一体何があったんですか、コムイさん!」

「なんも返事ないさ!」

『分からない!
こっちも状況が掴めない!』

通信の遠くからリナリーが必死に通信の途絶えた三人を呼んでいる。

『ただ…』

「ただ?」

『アクマの数が、ひとつ増えたような…』

「え…?」

『とにかく分からないんだ。
アクマの数は大ざっぱでしか受信されなくて
正確な数まで把握出来ない!』

「く…!
頼む…!生きててくれ!」

愛する人と大切な仲間の生存を祈るしか出来ないもどかしさ。

さっきまでの活気はどこへやら
深刻な空気に変わっている。

「(ルシファー…!
お願いだ!死なないで…!)」


















……コムイ、さん…』


















「っ!?」

弱々しく聞こえてきた声は
今まさに生存を願った愛しい人だった。

「ルシファー!」

「無事か!良かったっ」

『状況を報告してルシファー
一体何があったんだい!?』

『ぅ…』

負傷したのか、どこか声に張りがないルシファー。

『アクマが、急増し
流れ弾によりファインダーが死亡…
身を隠していた瓦礫が崩れ
私は頭部を、負傷…
他は無事…です』

「ファインダーが…!」

くそっ間に合わなかった!

歯を食いしばって悔しさを噛み締める。

だが、次に信じられない言葉が聞こえてきた。

『気を失ってたので、実際に見たわけではありませんが…
カストルは、突如現れた千年伯爵に
殺されたよう…です…』

「…………え?」

伯爵…?

なんで、伯爵が?

しかも…殺されたって…

『ポルックスは悲しみのあまり
伯爵の口車に乗り、カストルをアクマにした直後
殺されました…』

「は…!?
え、な…なんで…!」

こんな短時間に

なんでそんなことに!?

『その後…
アクマになったカストルは
ポルックスのイノセンスが暴走し
双子両名を巻き込んで…
咎落ち…しました……』

「!!?」

『現在、多数のアクマ達は咎落ちした双子をターゲットにし…
双子も暴れまわっている為
ターゲットにされていない私は、辛うじて生きている状況です…
ですが…このままでは、いつ近くの村の住人などに被害が出るか分かりません。
私も…意識が朦朧として
いつ気を失ってもおかしくありません…』

「待ってルシファー!
伯爵は…伯爵はなんでそこに来たんですか!?」

すべて信じられない…

信じたく出来事。

それでも僕は
ひとまず気になって仕方ない突然の伯爵の登場を聞いた。

まだ経験の浅い双子のイノセンスを狙ってきたのなら
ノアの誰かだけでも十分だ。

それなのに、なぜ伯爵自ら…?

『……………』

「ルシファー?」

どうしてか、何も言わない彼女。

もしかして気を失った?

……敵のど真ん中で?

「ルシファー!起きろ!!
眠っちゃいけない!!
起きるんだ!!」

『…伯爵は…』

か細い声が聞こえた。

ひとまず起きてることに安堵する。

『伯爵は……私に、呼ばれて来たようです…』

言ってる意味が分からなかった。

混乱する僕達に構わず
今にも眠りそうな声でルシファーは続ける。

『私の心の中の闇に惹かれ
私が伯爵を呼び続けたから…』

『ルシファー…?
ごめん、どういう意味だい…?』

『双子のせいで、私のお母さんとお父さんが死んだ』

「!?」

やっぱり、ルシファーはもう両親のことを…!

『この惨劇は
私が引き起こしたものなんです…
私が、伯爵を求めたりしたから
2人は死んで、アクマになって
更に咎落ちまで……』

「ルシファー…」

『私の、責任なんです…っ』

声が、震えている。

あのルシファーが

泣いてる。

「ルシファー!それは違う!」

「そうさ!お前のせいじゃないさ!」

『私が伯爵を求めてたのは事実です!
一瞬でもいいから、一生呪い続ける事になっても構わないから
お母さんとお父さんに会いたいって思ったから…!』

「ルシファー!冷静になって下さい!
いつもの君に戻って!!」

『私のせいなら
私が、責任とります…』

「え…?」

『…コムイさん
アレン・ウォーカー達を撤退させて下さい。
もう必要ありません…』

『……ルシファー?
な…何をする気だい?』

コムイさんの声色が、少し変化した。

『もうこれしか手がないんです』

『ルシファー、ダメだ。
アレンくん達が到着するまで頑張るんだ』

『私が引き起こしたことなんです。
お母さんとお父さんが生かした2人を
今度は私が殺してしまった…
償えることは、もう…これしか…!』

『ダメだ!許さないよルシファー!
これは命令だ!!アレンくん達が到着するまで
何も歌ってはいけない!』

『スーマンの咎落ちの時
確か…アレン・ウォーカーの声に反応してたって
言ってましたよね…?』

「ルシファー…
まさか…っやめろ!!」























『最期に
私の懺悔…聞いてもらえる…?』


















その時リナリーが

何を思ったのか

教団内すべてに放送するボタンを押した。

 


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