28.まっすぐな2人



任務に出掛けたルシファーと入れ替わるように
リナリーが短期任務から帰ってきた。

「そう…今度はルシファーが任務に行っちゃったのね。
やっとご両親のこと話せると思ったのに
なかなかタイミングが合わないわね」

「ルシファーの任務が終われば
今度こそ話せますよ。
彼女も少し元気を取り戻してますし大丈夫ですよ」

「それなら良かったわ。
やっぱり心配だったもの」

安堵したようにリナリーは笑う。

可愛いなって思ってしまうのは
やっぱり男だからとしか言いようがない。

「私、兄さんに報告書出して少し休むわ。
また後でねっアレンくん!」

「ええ。ゆっくり休んで下さい」

手を振るリナリーに僕も手を振って返す。

足取り軽そうな彼女の姿をしばらく見送って
僕は空いた小腹を満たす為食堂に向かったのだった。



















方舟のゲートを出て既に数時間。

徒歩の上、道が舗装されていない険しい山道というのもあり
進む速度は遅い。

おまけに普段体力作りなどしていない私がいるものだから
ファインダーの人と双子は私を気遣いながら進まないといけない為
更に速度が遅くなる。

これが普段から体力作りを惜しまないアレン・ウォーカー達で
私というお荷物もなく
そして走っていれば数時間で目的地に着いたであろう。

日はもう夕方に差し掛かっていた。

「今日はもうここで野営しましょう。
夜の暗闇でアクマと戦うのは危険です」

カストルの提案で野営をすることになった。

私達は特に話すこともなく無言で火を囲む。

辺り一帯は廃墟と森。

かつて栄えたであろうその残骸は
今では見る影もなく廃れきっている。

「(廃墟の残骸があって助かった。
残骸があればあるほど身を隠せる…)」

残骸に有り難みを感じるのは、恐らく私くらいだろう。

チラリと前を見る。

向かいには兄弟笑いあいながら、ファインダーの人と楽しげに談笑する双子。

「この任務が終わったら
師匠が今までとは違う修行をつけてくれるんだよな?兄さん」

「そう言ってたね。
また油断して怪我したら先延ばしにされるみたいだけど」

「大丈夫だって!
今回こそ油断しない!」

「そうだね。
今回は守る人もいるし…
頑張ろうなっ」

カストルはそう言って私を見る。

目が合った私はすぐに逸らし

「眠いので寝ます。
おやすみなさい」

脱いだ団服を丸めて枕にし
私はその場に寝転がる。

「おやすみなさい」

カストルの声が
一瞬アレン・ウォーカーの声に聞こえた気がしたが
私は気にしないふりをして眠りについた。

「…カストルさん、ポルックスさん
あまりこの人と関わらない方が良いですよ?」

ファインダーの言葉にキョトンとする双子。

「なんで?」

「ぼく達は嫌われてますが…
悪い人じゃないですよ?」

「こいつは教団内で誰よりも嫌われてるんです。
寝てるばかりで何もしない。
偉そうなこと言うだけで何もできないし、しようともしない。
ただイノセンス適合者というだけでチヤホヤされてるぐーたらエクソシストなんです。
関わって良いことなんてないですよ」

「そんなことありません」

カストルがハッキリ言い返し
ファインダーは驚いて凝視する。

「彼女が何も言わないからって決め付けすぎでは?」

「そうだよ。
ルシファーさんはオレと兄さんを助けてくれた恩人だ。
むしろオレ達じゃ逆立ちしても出来ないことをやってのける凄い人だ。
ぐーたらエクソシストじゃねぇよ」

2人のエクソシストに反論され、ファインダーは黙るしかなかった。

「(…………)」

まだ眠っていなかった私は
ただ黙って寝たふりをするだけだった。

 


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