27.突き放しても無駄



「今回の任務はルシファーのマイクとヘッドホンを実用化する為の検証も兼ねてる。
だから守る人がいるよ。
カストルとポルックスは前回のように油断しないように」

ポルックスとカストル
そしてルシファーは3人並んでコムイの前に立っている。

「3人は何かいざこざがあったみたいだけど
これは仕事だ。公私混同しないように」

『はい』

「ルシファーは大丈夫かい?
最近回復速度が極端に落ちてるらしいじゃないか」

「任務のように命懸けなら話は別ですよ。
死ぬ気で以前の回復速度を取り戻します」

「そうか…頑張るんだよ」

強気の態度のルシファーを見て
コムイは少し安堵して微笑する。

「任務内容は大量発生したアクマ、レベル1の破壊と単純なものだ。
けれどその発生場所が森の奥の荒廃した所で
方舟のゲートを使ってもしばらく歩かないとたどり着けない。
戦闘はもちろん、道中も十分気をつけて。
案内はファインダーの人がいるから安心していいよ。
…じゃあ、カストルとポルックスはヘッドホンをかぶって」

指示された通りカストルとポルックスは渡されたヘッドホンをかぶる。

ルシファーはヘッドホンではなくマイクを受け取った。

「彼女は前線に出れないから回復が必要になったら呼びかければいいよ。
そのヘッドホンはマイク機能も搭載してるから通信も可能だ」

「へえ…便利ですね」

「ヘッドホンしてるのに特に違和感なく兄さんの声が聞こえる。
ハハッすごいや」

若干はしゃぎ気味な双子。

ルシファーだけがいつもと変わらない表情でその様子を眺めていた。

「科学班自慢の一品だよ。
さあ、行っておいで」

まるで我が子を見送る父親のような表情で目を細めるコムイ。

『行ってきます』と3人は部屋を出ようとした時

「ルシファー」

「…はい?」

コムイに呼び止められ振り返る。

「この任務が終わったら大切な話がある。
だから、帰ってきたらすぐに来るように」

「…………」

真剣な表情のコムイをルシファーはじっと見つめ

「はい。分かりました。
それでは行ってきます」

そう言って背を向け、ドアを閉める。

「…………」

「…ルシファーさん」

「なんでしょう」

「ぼくとポルックスは例え貴女に嫌われてても諦めませんからね」

「…………」

「どう考えても貴女はやっぱり恩人だから
いつか分かりあえると信じてます」

カストルはルシファーに強い眼差しでハッキリ言って2人で先に行く。

恐らく準備の為に一度部屋に戻るのだろう。

「(……突き放したつもりだったのに)」

何故ああも自分にこだわるのか。

ルシファーは理解出来ず眉をひそめるしかなかった。

「(あるいは彼等も知ってるのかもしれない…)」

私が、2人を助けた婦人と紳士の娘ということを…






















「頑張って下さいね、ルシファー」

「二回目の任務かー
まだ緊張するんじゃねぇの?」

ルシファーの見送りの為に
僕とラビは方舟のゲート前に来ていた。

連れてきていたティムを彼女に手渡すと
頬を摺り合わせるように挨拶を交わす2人。

仲良しな様子にちょっとティムに妬いたのは秘密だ。

「カストルとポルックスはまだ新人ですが
未熟な所を補うように2人のコンビネーションは抜群ですよ。
安心して守られて下さい」

「双子ならではの戦い方って感じだよなー
本当は事前に打ち合わせてたんじゃないかってくらい息ぴったりさ」

「そうですか。なら、安心ですね」

本当にそう思ってるのか
いつもの無表情で分からないが
少なくとも疑ってはないように見えた。

「…ルシファー」

「?」

ティムでぷにぷに遊びながら僕を見るルシファー。

「もう、大丈夫なんですか?」

心の方は…

「………大丈夫ですよ」

最後の方は言葉にしてないのに伝わったようだ。

彼女は僕にティムを返しながら

「もう割り切りました。
それに、仕事で私情を挟むことはしません」

場合によりけりですが。

そう付け足す。

「そうですか…
なら、良かったです」

「ご迷惑おかけしましたね」

「良いんですよ。
考えを改めてくれて僕は嬉しいです」

僕は彼女が堕ちるまえに助けられた。

それが何よりも嬉しい。

嬉しさで溢れそうな胸。

それを押し隠すように
僕は自分より背の低い彼女の頭を優しくポンッと叩き
戦場へ赴く愛しい人の背を見送ったのだった。

 


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