22.重い闇はのしかかり



「ラビ…ルシファーのことお願い出来ますか?」

任務に出発する僕とリナリーを見送りにきたラビ。

ラビは難しそうな顔をして頬をかきながら

「そうしてやりたいのは山々なんだけど…
オレももう少ししたらクロちゃんと任務なんさ」

「そうですか…」

「ルシファーがどうかしたの?アレンくん」

事情を知らないリナリーが不思議そうに聞いてくる。

「ここ最近…彼女の様子がおかしいんです。
冗談だと言ってましたが
人をアクマにするのはどんな感じだろうか、だなんて聞いてきたり…」

「そんな…!
そんなこと言ってたの?」

「ルシファーの奴
近頃なんでか癒しの力が弱くなってて
助けられたはずの人を助けられなかった事が増えてるらしいさ」

「え…そうなんですか?!」

「だから陰口も前よりヒートアップしてさぁ
珍しく落ち込んでるんさ、アイツ」

「ルシファー…」

「こんな時に誰も傍にいてあげられないなんて…
ミランダもマリと神田と組んで任務に行っちゃったの。
兄さんも兄さんで忙しい上に
今あの人の両親のことで顔を合わせずらい状況でしょう…?」

「コムイさんは…
一体いつになったら両親のこと話すつもりなんですか?」

「いい加減話してやれよ。
可哀想さ」

「兄さん…ルシファーに嫌われないか不安だったみたいなの。
私と兄さんは血の繋がった兄妹だけど
ルシファーと兄さんは違うでしょう?
だから、大切に思ってるルシファーから嫌われないかって心配してて…」

「そんなこと…!
ルシファーはコムイさんのこと嫌ったりしません!」

「ええ。
私も同じこと言ってやったわ。
そしたらちょっと勇気が出たみたい。
だから、私もルシファーに謝りたいから…
私がこの任務から帰ってきたら話そうって約束したの」

にこっと笑うリナリー。

僕もそれに笑い返し

「そうなんですか…
ついに、話すんですね」

「コムイも臆病になるんだなぁ」

「アレンくん…
ルシファーに両親のこと話したら、きっとあの人は泣くわ。
その時…傍にいてあげてね」

「はい。もちろんです」

「私の姉さんを愛してあげてね」

「ええっいつまでも愛し抜きますよ」

「その前にコムイに挨拶に行かないとなアレン。
殺される覚悟で」

「う」

「ふふっいざとなったら私に任せて。
兄さんだってルシファーの幸せを願ってるんだから」

クスクスと笑うリナリーに吊られ
僕達も和やかに笑う。

そして僕とリナリーはラビに見送られながら
任務へと向かった…






















「ポルックス。
次の任務が来たよ」

「え、そうなんだ」

任務書をひらつかせながらカストルがポルックスに近付く。

「でも急ぎじゃないから
もう少し傷が癒えたらで良いらしい」

「どんな内容なんだ?兄さん」

「前行った内容と同じだ。
大量発生したアクマ、レベル1狩り。
でも今回はクロウリーさんみたいなベテランは着かず
二人だけの任務だよ」

「次は油断しないようにしないとな」

「そうだね。
せっかく救われた命なんだ
あの婦人と紳士の命を無駄にしないためにも生きないとな」

病室で仲良く笑いあうポルックスとカストル。

そんな2人の会話を聞きながら
黙々とシーツ交換の作業をしていたナースは、作業を終えて病室を出る。

扉を閉めてふと横を見ると

「あら…ルシファー…?」

俯いて壁にもたれかかっるルシファーがいた。

「どうしたの?
こんな所で」

「……何でもないです」

「そう?」

「ええ…通りがかっただけです」

「ポルックスとカストルなら元気になったわ。
貴女のおかげよ。
ありがとう、ルシファー」

「いえ…とんでもないです…」

フラフラと眠気を押し殺しながら歩き出す。

ナースはしばらくそれを見送り
やがて汚れたシーツを抱えて歩き去った。

「(あの二人は生きてるのに
なんでお母さんとお父さんは死んじゃったの…?)」

あの二人が死ねば良かったのに。

返して…

私のお母さんとお父さんを返してよ。

心の中で渦巻く思いはそればかり。

二人は何も悪くないって
わかってるはずなのに。

「ふふ…私って、ホント嫌な人…」

アクマにしたって
会えるのはお母さんかお父さんのどちらか。

でも…

「(どちらかには会える…
例えその後、殺されてアクマの皮になったとしても
唯一、一瞬でも会える方法はそれしかない)」

仲間なんていらない。

愛してくれる誰かが欲しいの。

独りはイヤなの。

「ごめんね、アレン・ウォーカー。
私…嘘ついちゃいました」

待っていれば伯爵はくるかな?

人を殺し、呪う運命だって構わない。

二人に、会えるなら。

 


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