20.かける言葉は空回り



ヒソヒソと嘲笑がこもった囁きが耳をつく。

談話室で寝ていた私はふと目を覚まし
その囁きに思わず寝たフリをしてしまった。

「あいつ、この間任務行ったらしいぜ」

「マジ?
戦えねーのにどこ行くんだよ」

「アレンと組んでイタリアに行ったってさ」

「ハッどうせアレンしか戦ってないんだろ。
任務とか言ってイタリアに旅行でも行ってきたんじゃないんですかー?」

「はははっだよなー」

「アレンにもいい迷惑だぜ。
貴重な戦えるエクソシストをてめぇがパシんなっての」

「パシられてもいいんじゃね?別に。
だってアレンさ、あいつのこと好きらしいぜ?」

「え、それマジなの?
あんな奴のどこがいいんだか…」

「好みは人それぞれだろ」

「いやぁ、あいつだけは理解出来ねぇ
マジでどこがいいんだか…」

「なー。
あんな役立たずいるだけ邪魔だよな。
一緒に任務したくねぇし…
教団から抜けろよ」

「抜ける為には死ぬしか…」

バン!!

突然、誰かがテーブルを思いっきり叩き
イスをひっくり返して立ち上がる音がした。

不意打ちの音に私はビクッと体を跳ねて顔を上げる。

他の人達も例外ではなく
顔を音の元へ向けていた。

そこにいたのは、神田だった。

「コソコソコソコソ…!
うぜぇんだよ!耳障りだ!
言いたいことあるならハッキリ言いやがれ!!」

そう言って歩きだし、談話室を去ろうとする。

途中私をチラッと横目で見て
だがそれだけで声をかけることなく行ってしまった。

「(神田…)」

「な、なんだよアイツ」

「うぜぇのはそっちじゃねぇか
マジびびったー」

陰口の矛先が私から神田に向く。

だからといって

私がそれを止めれる気がしない。

その時私の横でもじもじと恥ずかしそうにうろつく
黒い人がいることに気付いた。

「…アレイスター・クロウリー…」

「だ…大丈夫であるか…?」

「………」

寝たふりしてるってバレてたのかな…

「平気です。
いつものことですから」

ちょこんと恥ずかしそうに隣に座ってくるアレイスター・クロウリー。

「き、気にすることないである。
私達はルシファーの良い所沢山知ってるから…」

「いいんです。
全部本当のことですもの」

「ちっ違うである!
ルシファーは優しくて一生懸命で…!
そんなルシファーが私は好きである!」

かなり恥ずかしそうだ。
顔が赤い。

「私も好きですよ。
アレイスター・クロウリーのこと」

「!?」

「でもね…私、本当に役立たずになりつつあるんです…
今日もね、治療頼まれたんだけど…
かなり時間がかかっちゃって…」

双子だけじゃなかった。

他の人達にも影響が出だした。

「結局…死んじゃったの。
その人…
別に聴覚がやられてたわけでもないのに
私が歌えば癒せたはずなのに
…治せなかった…」

「…!」

「ねぇ…私何のために此処にいるんだっけ…?
戦えない上に唯一出来てた人を癒やすことも出来ない。
役立たずと言われて当然だよ」

「ルシファー……」

「アレイスター・クロウリー…」

「…なんであるか?」




















「人をアクマにするのって
どんな感じなのかな…?」

















「もう大丈夫なんですか?」

朝食を食べに食堂へ来て見たら
まだ所々に包帯は絆創膏はあるものの、元気そうなカストルとポルックスがいた。

「はい。ご心配おかけしましたアレンさん」

「アレンでいいですよ。
良かったですね、元気になって」

「兄さんオレを庇ったりするから一番怪我がひどかったよな」

「大事な弟を守るのは当たり前だろ?
唯一の肉親なんだ」

「唯一の肉親だから二人で必ず生きようって約束しただろ」

「そうだったな」

笑いあう二人は本当に合わせ鏡だ。

双子って本当にそっくりなんだなぁ

僕はそう感心する。

「此処まで回復できたのはルシファーさんのおかげですね」

「え、カストル知ってるんですか?
誰が治療してくれたのか」

ルシファーがドクターに口止めするはずなのに。

「はい。
朦朧とした意識でしたが、傷が治っていく内にハッキリしてきて…
その時丁度倒れたルシファーさんがドクターに
『怪我がだいぶ癒やされたからもう自然治癒でも大丈夫』という話をしてたんです」

「え…」

倒れた…?

眠ったんじゃなくて…?

「だから、彼女が治療してくれたんだなって思って…」

「オレと兄さんの命の恩人だよな。
でも…なんでだろうな…
なんか…オレ達あの人から避けられてる気がすんだよ…」

淋しそうに呟くポルックス。

だって、ルシファーは君達二人を庇った婦人と紳士の娘だから。

そう言うことも出来ず
僕はただ黙り込むしかなかった。

 


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