14.静かな旋律



「おーい。大丈夫さー?」

食堂でぐったりと潰れているポルックスとカストルを見つけたラビ。

ツンツンと頭をつついてみると
頭を上げるのもかなり辛そうに顔を上げ

「も…ダメです。ラビさん…」

「ラビで良いって」

「兄さん…オレもう死ぬかも…」

「ぼくも全身筋肉痛だよポルックス…」

へばっている双子を見てラビは楽しげにカラカラ笑い

「今まで体鍛えたことないんなら仕方ないさ。
やつれてたんだからお前らはまず基礎体力作りと十分な食事さね。
肉つけろ肉」

「たしかティエドール元帥の弟子になったんだっけ?」

何処からともなくリナリーがひょこっと現れる。

「イノセンスがカストルはサーベルでポルックスがボウガンよね?
カストルはともかくポルックスは遠距離の武器だら
師匠はクロス元帥がいいのかもって兄さんが言ってたけど…」

「あれはアレンが泣きながら土下座して止めたさ」

「そうだったわね」

クスッとリナリーが笑う。

「『師匠の主な被害者は僕だけで十分です』ってな。
クロス元帥もクロス元帥で『これ以上野郎の弟子なんざいらん』とか言いそうさ」

「ぼくとポルックスの師匠は優しい方なんですね。
皆さん凄いなぁ…
これよりも厳しい修行に耐えてるだなんて」

「その内お前らの先輩が帰ってくるから
その時またしごいてもらうさ」

「マリはともかく神田相手は冗談にならないわよ、ラビ」

呆れながらリナリーが言う。

食堂が笑い声で包まれ賑やかになり
徐々に夕食目的で人が集まりだす。

双子が入団して、既に数日が経っていた。





















「やっと着きましたね。
ほら、ルシファー起きて下さい」

汽車のイスに横たわり
僕のコートを毛布代わりにして
すよすよと眠るルシファーの体を揺する。

フッと目を覚ますと彼女はまずティムを捕まえて

「ティムおはようですー…」

頬をピトーとくっつける。

「おはようございます」

「おはようございますアレン・ウォーカー。
汽車の中は退屈です」

「素直に方舟使えば良かったんですよ。
誰ですかね、汽車に乗ってみたいなんて言ったのは」

「乗ったことないんですもん」

「もう神田の怪我完治してるんじゃないんですか…?」

「よし」

「よし。じゃないですよまったく」

汽車から降り、ファインダーを先頭にして目的地へ向かう。

「早く神田の怪我を治したかったんじゃないんですか?」

「いや、汽車に乗ってみたかっただけです」

神田は単なる口実か!

しかし…ここまで親しげなのはかなり気になるな…

やっぱり2人はそういう関係で…?

うーわ。考えたくない考えたくない。

本気で殴っていいかなあのバ神田。

「自分の世界に浸っているアレン・ウォーカーさん。
病院に着きましたよ」

指摘され我に返る。

駅から意外と近い病院だったようだ。

ファインダーに案内されるまま病院に入り
その病院内の関係者に身の上を話した所
普通の病室とは少し違う雰囲気の病室に案内された。

病室のドアを開けると
そこにはベッドに横たわるマリと不機嫌そうにベッドの上に座っている神田。

神田はルシファーを見るとかなり驚いたように目を丸くし

「てめ…!
なんで此処にいやがる!!」

「やあ神田。怪我したんだって?
初任務が君の治療だなんて
昔とあまり変わらない気がしますねぇ」

「うるせえ!さっさと帰れこの馬鹿!
戦えねぇテメェがいると足手まといで迷惑なんだよ!!」

「治療が終わったら帰りますよ。
ご心配なく」

「コムイの野郎は何してやがる!
もやし!テメェもなんで止めなかった!!」

「アレンです。
仕方ないでしょう。正式任務なんですから」

僕がお願いしたなんて死んでも言わない。

「さっさと終わらせますよ。
アレン・ウォーカーも近くのイスに座って下さい。
神田とマリの治療のついでに長旅の疲れを癒やしましょう」

言いながらイノセンスを発動させる彼女。

ヘッドホンのようなものが彼女の両耳を覆い
そこから機械的な三つの羽が広がる。

そういえば、ルシファーのイノセンスを見たのは初めてだ。

今までは何かと見る機会がなく
初めてオラトリオを見た時は怪我で意識が茫然としてイノセンスまで見る余裕がなかった。

「(まるで天使だ)」

僕は言われた通り近くのイスに座る。

そして歌が始まる。

彼女の歌をはっきり聴くのもこれが初めてだ。

聞いたことのない曲。

聞いたことのない言葉の歌詞。

音楽に関して僕が無知というのもあるけど
彼女が歌うその曲は

哀愁、幻想、神秘

すべてが詰まっていて、胸を締め付けられるほど切なく思う。

何という歌なんだろう。

何という言葉なんだろう。

今はただ

歌が流れるまま癒やしに身を任せた。

 


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