13.行き先はイタリア



コムイさんからの任務通達を受けて数時間後。

僕達はイタリアへ向かう為汽車に乗っていた。

「今回の任務は僕じゃなくて君が主体ですよ。
僕はあくまで護衛ですからね」

「用事するに越したことはありませんが…
やっぱり護衛って必要なんですね」

「当たり前じゃないですか。
アクマとノアはイノセンスを狙っています。
君だって立派なイノセンスの適合者なんですからノアとアクマの標的の一人なんですよ?
おまけに戦えないから格好の餌食です。
こんなに楽な餌はいませんよ」

「餌って言うな」

「更に言うなら僕は護衛兼見張りですよ。
君はどこでも寝ちゃいますからね」

「見張りならファインダーさんに任せます」

「彼はあくまで道案内と連絡係です」

「連絡ならティムと私のゴーレムがいます」

「あの、ティムは僕のゴーレムなんですが」

よほどティムがお気に入りらしい。

出発前にやってきたティムを捕まえてからまったく離す気がなく
今も膝の上に乗せて時折プニプニと指で遊んでいる。

「ティムください」

「嫌ですよ。
僕が師匠に殺されます」

「弟子なら責任取れますよ」

「師匠の借金の他に
これ以上何の責任を取れと言うんですか貴女は」

僕を殺す気ですか。

そう言うと、ルシファーはクスッと声を漏らして微笑する。

あ……

「笑った…」

「…はい?」

途端に何時の無表情に戻る。

「あ、いえ。
ルシファーの笑顔って初めて会った時以来だなって思って」

「申し訳ないんですが
アレン・ウォーカーと初めて会った時の記憶ってあまりないんですよね。
コムイさんがアレン・ウォーカーだよって紹介してくれたぐらいです」

「ちょっ
やっぱり寝ぼけてたんですかあれは」

綺麗な笑顔だったのにちょっとショックなんですけど。

まあ、期待したって
彼女はいつも斜め上の反応で返してくる人だから
予想出来てた分あまり衝撃ではないけれど。

「ただ…」

「え?」

「ただ、目が覚める前に
まどろみの中で感じた誰かの体温が心地よかった事は
ハッキリ覚えてます」

「………」

「毛布なんかよりも、ずっと」

「っ…」

ルシファーがティムとじゃれついて僕を見てなくて良かった。

今間違いなく顔が赤いからだ。

眠っていた彼女をコムイさんの所まで運んだのは僕だ。

今ではおぶったり抱いたり普通になっているけれど…

何故かその事は秘密にしたくなった。

とりあえず顔を見られない為に
汽車の窓の外を眺める振りをする。

とんだ爆弾を投げられたものだ。

「ルシファーは…
怖いとか、悲しいとか、思ったりしないんですか?」

ムニーとティムを引っ張りながら僕を見てくる。

「さっき殴られそうになってても
君は表情ひとつ変えなかった。
怖いって思わなかったんですか?」

「…勘違いしないで欲しいんですが
私も人並みの感情はあります。
ただ、出し方がよく分からないだけです」

「出し方?」

「感情が一番発達する時期にはすでに教団にいました。
それはもう笑えない教団でしたよ。
コムイさんが来るまでは…
だから、未だによく分からないんです。
どう笑い、どう悲しみ、どう怒っていいのか」

「さっき笑ったじゃないですか」

「ええ。
でもどうやって出したのかわからなくて。
楽しい時に笑うのは分かりますが
それをどうやって面に出していいのか…」

「…………」

こんな話を聞いていると
リナリーがあんなに感情豊かになったのは奇跡なんじゃないかって思ってしまう。

コムイさんの存在はリナリーにとって偉大なんだろうな…

ルシファーはティムで遊びながら更に続ける。

「昔はそれなりに感情豊かな子どもだったからコムイさんが責任感じてるみたいで…
それ以外にも私とコムイさんしか知らない事で色々抱え込んでいるみたいなんですよ」

「ルシファーとコムイさんしか知らない事?
なんですか?それ」

「秘密です。
というか口止めされてまして」

「…………」

「だから彼にあまり負担かけたくないんですよね…
優しい人ですから」

そういえばルシファーとコムイさんは
まるで親子な関係ってリーバー班長が言ってたっけ。

甘々な妹のリナリーとは違い
甘いけれど時には厳しく接したのがルシファーらしい。

そしてリナリーとルシファーは姉妹のような関係で…

あれ…

それじゃあ神田は?

リナリーのように教団が長いラビとルシファーは
どう見ても友人の関係だ。

だが、神田だって教団は長い。
その分ルシファーとの付き合いも長いはず。

「(まさか…まさかね…
あの神田がルシファーと…
バ神田め。いつか殴る)」

「アレン・ウォーカーが自分の世界に入ってしまいました」

 


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