11.もつれる気持ち



「この人殺し!」

むせび泣きながら罵声を浴びてくる一人のファインダー。

私はその様子を淡々と見ながら
特に言い返すこともなく無表情で黙り込む。

「俺知ってたんだぞ!
お前がっ歌で次々沢山の人を救っていたこと!
だから、陰口に耐えながらも頑張ってるお前を尊敬していたんだ!」

「…………」

「なのになんでだよ…!
なんでっなんで!
俺の友達は助けてくれないんだよ!
死にたくないって…あんなにも叫んでただろ!
なあ、なんでだよ!!」

ファインダーと私が立ち尽くす
その真横の扉の奥には
さっきまで息があり、大泣きしながら「死にたくない」と何度も何度も呟いていた
もはや今は遺体となって横たわるファインダーがいる。

「ドクターに諦められたあいつの治療も
お前なら助けられるって信じてたから連れて来たんだ…!
なんで死んでんだよ…っ
なんで死なせたんだよ!
人殺しっ人殺し!!」

「…………」

「なんとか言えよ!!
この役立たず!
お前なんかこの教団に必要ないって知らないのか!?」

「…私の力は、対象者に声が届かないと意味がありません。
……あの方はすでに耳が潰れ、鼓膜が破れていた。
意識は今まで見てきた方々より一番ハッキリしていたのですが
私がどんなに声をかけても
私がどんなに音をたてても
それに反応する素振りは全くありませんでした」

「……!!」

「こうなれば、私にも手の施しようがありません」

さあ、説明しました。

これらは全て紛れもない事実。

口答が不服なら
今すぐドクターが執筆されたカルテという書面をお持ちしましょうか?

…………。

ほら、ぐうの音も出ない。

どんなに悲しくても

彼に運がなかったことを
貴方は呑み込まないといけないんです。

「なんだよ、それ…
治療がうまくいかなかったからって言い訳か?」

理解は出来ても、心が納得出来ない。

それが人というもの。

「ムカつくんだよお前…っ
人の命のことなのに顔色ひとつ変えずによぉ…っ
大切な人の命が無くなる経験なんてないんだろ…
所詮他人の命はどうでもいいんだよなっお前は!!」

ファインダーが拳をつくり、それを私の顔目掛けて放ってくる。

「だ…っダメぇぇえ!!」

ファインダーの後ろから女性の声がし
その直後ファインダーが私に倒れ込んできた。

ドタ!!とその場に倒れ
運悪くごちっと床に頭を軽くぶつけた。

私は頭をさすりながら体を起こし
ファインダーの後ろを見る。

そこにいたのはガタガタと震える女性…

「…ミランダ・ロットー」

「ひぃぃいい!!
ごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさい!
私も頭を打ってお詫びをおおおお!!」

「待って待って待って!!
ミランダさん落ち着いて!」

今すぐにでも壁の角に頭を強打しそうな彼女を
やってきたアレン・ウォーカーが羽交い締めして止める。

なんとかミランダ・ロットーを押さえ込みながら
今度はファインダーを睨みつけ

「どんな事情があるにせよ
男が女性に手を上げるのは関心しませんね」

「く…」

「次に同じような場面に遭遇した場合
僕が相手になりますよ」

それを聞いて、ファインダーの人は涙を拭いながら部屋の中へと入っていった。

落ち着いたミランダ・ロットーを離し
アレン・ウォーカーは私に近付いてくる。

「大丈夫ですか?」

「……はい」

「話…全て聞いていました」

「…………」

「ルシファー、貴女のせいじゃありません」

「そうよ…
気にしちゃダメよ…?」

「仕方なかったんです。
こればかりはどうしようも…」



















「仕方ない…?」


















雰囲気の変わった私にアレン・ウォーカーとミランダ・ロットーが固まる。

「人の命を、仕方ない…?」

「え…」

「そうよね。
そう言えるよね。
他人の命だもの…
仕方ないで済ませられるよね」

「…ルシファー…?」

不思議そうに名を呼ばれ私は目元を隠すように手を覆い

「…ごめん。
ちょっと疲れたから…
私寝ます…」

呆然とする2人に背を向け、フラフラとその場から去る。

2人の気配が感じられなくなった所で
私は壁に背をつけ、ズルズルとその場に座り込んだ。

「なに言ってんの、私…」

原因が自分でない、人の命を助けられなかった時

仕方ないのは当たり前じゃない。

仕方ないって
言うしかないって分かってるじゃない。

なのになんで

あんな事言っちゃったんだろう。

ただ、なんとなく

命を軽視された気がしたんだ。

私のお母さんとお父さんが死んだと話していたコムイさんが
リナリーに「仕方ない」と言っていた時物凄く腹が立った。

お母さんとお父さんの命が

仕方ないで済まされた気がして。

軽く見ないでって

叫びながら飛び込みたかった。

でも、みんなは私を思って
両親の死を隠してくれている。

なら私も、話してくれるまで知らないフリをしよう。

みんなの思いを
私は無駄にしたくないから。

 


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