知らない話


只でさえ薄暗い空間が、さらにその色を濃くし完全な暗闇に包まれる。ぷつりと音を鳴らし、一斉に消えた光は、今何かが起こっていることを表していた。まあ、別にどうでもいいけど。

しかし、停電はなかなか直らない。メルシーはどうしたんだろうか。普通なら、すぐに状況を直してくれるはずだろうに。

ちらりと、見上げた視界には無機質な天井。


上で、何かあったんだろうか。


◇◇◇


気づいたら、どうやら寝てしまっていたようだ。室内は、いつもの薄暗さに戻っており、取り囲む機械も淡い光を放っていた。

覚醒しない頭で、欠伸をかみ締める。もう、終わったんだろうか。まあ、別にどうでもいいんだけど。


今日は、静かだ。


◇◇◇


あれから、急な停電のような事態が起きることはなかった。まぁ、あんなことも、ここに来て初めてのことだったけど。……多分。あんまり覚えてないや。


そういえば、そろそろバトルブレーダーズが開始されるらしい。出場するのは面倒くさいなぁ。只壊すだけなら、どこでやろうと同じだ。


だけど、こいつは興味あるなぁ。鋼銀河。
どんな風に壊してやろう、どんな風に壊れるだろう。ふつふつと湧き上がる高揚感が、全身を巡って思わず震えてしまった。待ちきれないと、どくどくと脈打つこの音は一体どこから鳴っているのだろう。
ああ、楽しみだ、早く潰したいなあ。


今日も、静か。



◇◇◇




静かだった。




◇◇◇



『水地!停電大丈夫だったか?いやぁー吃驚したよ!ここ来る途中いきなりどかーんってさ!いやふっつーに怖かった!!』

『そういや、明日からバトルブレーダーズじゃん!頑張ってな。私出られない分、水地に頑張ってもらうわ』



夢だった。


ふと、思った。
あのお節介は、どうしたんだろうか。


扉から、光が漏れる。




「…美羅?」




何も、知らなかった。












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