踏み出した一歩 一度吹っ切れてしまうと、人は強いものだ。そう実感しているのは、自分が今正にそんな状態だからだ。出よう、ここから出よう。そして皆に会って、謝って、話して、それから…。これからやりたいことがたくさん浮かび、自然と足が速くなる。もう迷いはない。早く皆に会いたい。 「そして一発殴られたい!」 大分誤解を受けそうな言葉が廊下に反響したが、本心である。もう、本当、今までの罪滅ぼしに殴ってほしい。それで許されるとは思っていないけど、殴られずにはいられない。 既に停電は直っており、道に迷うこともなく進んでいける。きっとこの停電も、キョウヤ達によるものだったのだと気づいたのはつい先ほどだ。メルシーがいないのもおそらくそうだろう。そんなことができる人物で、思いつくのはひとりだ。やっぱすっごいなぁ、まどか。 皆はどこにいるのだろう。建物から出ることを優先に足を進めていれば、いつかは会えるだろうか。 いくつもの曲がり角を曲がり、階段を下がった頃、思い出したように体が痛くなってきた。なんだか、自分が思っているよりも全然進んでいない気がする。…こんな状態で殴られたら、本格的に病院送りかもしれない。 「でもっ、殴ってほしいんだよ…っ」 いけない。早く皆を探そう。 ◇◇◇ さて、どうしたものか。 大分入り口まで近づいてきたように思うけれど、全く誰とも会わない。すれ違いになるといけないし、ここは一度セキュリティルームに行くべきだろうか。そしたら、まどかに会えるかもしれない。闇雲に走り回るよりも、そこを目的地に定めたほうがいいだろう。そう考えてこの階を目指したのは、間違いではなかったようだ。 さらに進み、奥へと進む扉を開ける。 扉が開いた瞬間、賑やかなその空気に気づいた。しまった、と思い軽い舌打ちをしても手遅れだ。なにせケアトスは側にいるが、例の如くランチャーがない。知らん顔して上手くやり過ごすしかないだろう。扉が開ききる僅かの間でそんな考えにまとまり、覚悟して顔を上げた。 自然と踏み出すはずだった足は、そこで止まった。 「………美羅?」 最初に出すべき言葉が、見つからなかった。 会いたかったはずなのに、嬉しさよりも驚きが先に来てしまって頭が回らない。 銀河が、ケンタが、まどか、氷魔、ベンケイ、ヒカル、翼、皆だ、皆がいる。何かを言わなくちゃと、思い出したように吸い込んだ息がヒュッと音を立てていた。 (あれ、私、何が言いたかったんだっけ。そうだ、謝らなくちゃと思ってたんだ。ここで言うべき?それとも近づいて?いや、まずは挨拶から…?) 不自然にわたわたと両手を動かしていると、彼らの足が一歩動いた。 「美羅!」 その声に急かされ、私も大きく地面を蹴った、 「はい、そこまでーーー!!!」 はずだったのに……!!! 室内に響き渡った声に、思わず足を止め振り返った。銀河たちも同じように目を丸くし、声の方向に目を向けている。馬鹿にしたような、子供を嗜めるようなその言葉に違わず、声の主も大分歪んだ表情をしているではないか。なんだコイツ、なめてんのか。 「大道寺!!」 「もう帰ってきてたのね…」 「はあ?!お前出かけてたの?!鍵開けてけよ信じらんねえ!!!」 おい初耳だぞ大道寺!お前が出かけてる間に何かあったらどうしたんだよあっぶねえ…!まあ、鍵が開いてたらそれこそ逃げてましたけどね、全く。 「美羅さん、貴女も懲りない人ですねぇ…。自分が何をしてるか分かってるんですか?」 呆れたと言わんばかりの言葉と、馬鹿にしたような表情に苛立ちが隠せない。ここまで来てなんでこいつに邪魔されなくちゃいけないんだよ…!!懲りないですねえってそれこっちの台詞だから!!! 20141024 ← ×
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