それだけのこと

「赤木さん、どうもです」

『おぉ、この間ぶりだな』

「今日は天気も良くて、空気がおいしいですね」

『ククッ、煙草でも吸いてぇな』

「見てください、髪型変わったの気がつきましたか?」

『ん?…あぁ、そういやそうかもな』

「なんて、赤木さんは気づきませんよねーやっぱり」

『おいおい、どういう意味だ』

「赤木さん、どうしましょうこのままじゃ私、天さんと結婚してしまいそうです」

『はあ?なんだ藪から棒に』

「私だってもういい歳なのに、彼氏のひとりもできません…」

『いい歳って…、俺から見りゃあ十分餓鬼だけどな』

「このまま相手がいなかったら、天さんが貰ってくれると、天さんとお嫁さん三人の気遣いが心にしみます…!」

『ああ、そりゃあなあ…。ってお前ひろはどうした』

「確かに4人生活楽しそうですけどっ、なんかっ、こう…!」

『ひろにしとけ名前、お前らお似合いじゃねえか。お前は知らねえだろうが、ひろはずっとお前のことをだなあ…』

「ひろ君も、なんか最近彼女できたかもなんですよ」

『はあ?そんなわけねえだろ。現に前もここに来た時、どうすりゃいいと頭を抱えてたぜ』

「急にですね、雑誌開いてこの中だったら名前さんはどれがいいと思うって聞かれてですね」

『ああ』

「なんでそんなこと聞くの?って言ったら、お、女の子って何貰ったら喜ぶのかな…って。とか言ったんですよ!リサーチですか!ひろ君ったら独り身の仲間だと思ってたのに!」

『……あぁ、ひろも救われねぇな』

「だから私、悔しくってその中で一番高そうだったピアス選んじゃいました」

『ククッ、ますます救われねぇな』

「皆して幸せして…私にも早く良い人来ないかなぁ…」

『おい名前、そのピアス次は絶対つけてこいよ。笑ってやるから』

「本当にもう天さんに嫁ぐしかないかな…」

『ついでに、婚約しましたとでも言いに来い!こうなっちまえば、爺共の楽しみなんて限られてるんだからよ』

「沢田さんにですね、ひろ君ひどい男ですって八つ当たりしたら、必死に否定されたんですよ!」

『銀次も鷲尾も…お前らの行く末を楽しみにしてだな…』

「沢田さんひろ君に甘すぎですよ。ひろ君はいい男だって散々聞かされました」

『そういや沢田の奴が一番心配してたな。早いとこくっつけお前ら……ん?』

「それにですね……」




「名前さん?」




「あ、ひろ君」

『よぉひろ』

「なんでここに…」

「なんでって、赤木さんに愚痴りに来たのよ」

「愚痴?なんの話してたの?」

『ククッ、お前がいい男って話だよ』

「なんでもない」

「なんだそれ」

「ひろ君こそどうしたの?」

「え、ああ、いや俺は…」

『なに後ろに隠してんだひろ、さっさとその箱渡しちまえ』

「ダメだよ、今赤木さんは渡さないよ。そう!いいんだ私には赤木さんがいる!」

「は?何言ってんの?!」

『ほらひろ、早くしねえと取られるぞ俺に』

「ひろ君なんて沢田さんとイチャイチャしてればいいじゃない!」

「ちょ、話が読めないんだけど!」

『クククッ』

「馬鹿馬鹿!ひろ君の裏切り者ー!」

「ええっ?!」




昔から変わらない光景、生活。
…まぁ、悪くねぇな、こういうのも。



『お前ら本当、何も変わらねえな』



「…ん?今、ひろ君私の頭触った?」
「いや?名前さんこそ俺の頭…」


「「え?」」



おいおい、そんな驚いた顔するもんじゃねえよ。






20120204








×