はじめまして

一目見た瞬間、ビビっと何か電力的なものが全身を駆け巡った。だけど、俗に言う一目惚れとは違うのだよ、これが。だって既に落ちてたし。ん、あれ?自分、彼のこと好きだったんだっけ?うっそ、そんなつもりなかったんだけどな。
確かに、他のどんなクラスメートよりも視界にいたような気はするけど、それは恋愛云々じゃあないはずだ。そんなこと言ったら、全校生徒彼にぞっこんだよぞっこん。




と、そんな感じのことを考えながら、改めて、数年ぶりの再会を果たしたクラスメート、宇海零の姿を見つめた。

……こんな悪そうな雰囲気だったっけ?




「やあ、宇海久しぶり」
「名前さん、久しぶり。元気そうだね」
「何か悪いことでもしてるの?」
「うわあ、唐突」
「あとサングラス全然似合ってないわ」
「…外せばいんだろ」


ああ、やっぱ宇海か。
軽く溜め息をついて、一瞬見せるどこか子供っぽい表情とか。
でも、気のせいだろうか。やっと見ることのできた目が、以前と比べると酷く深い色に染まっているのは。


なんか、悲しくなるくらい綺麗だ。



「変わったね、宇海」
「まあね。君は全然変わってないみたいだけど」
「人はそう簡単には変わらないからね」
「…なんか、裏があるなあ」
「宇海は、そうなるほどの何かがあったわけだ」



ぱちっと目を見開いて、宇海はゆっくりと口元を上げる。刹那、世界が塗りつぶされたかのような、ざわめきが途切れたかのような、世界の歪みを感じた。


「絶対零度…」
「え?」
「いや、上手いこと言ってみただけ」



ああ、好きなんかじゃなかった。
そんな大げさなもんじゃなかったよ。そんな簡単なもんじゃなかったよ。宇海は。


「変わったね、宇海」
「…君は全然、変わらないけどね」



見てみたかったな。
今までも、これからも。



(届かない世界。まるで物語に想いを馳せるようで)






20111220








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