反則の指先 「はいこれ、俺の愛」 珍しい冗談にさえ、湯気が出るほど赤面してしまった一回目。手渡された小さな洋菓子は、なんの意味も含まれていない。しかし、こちらの反応が余程お気に召したのか、アカギさんは度々この言葉を使ってくる。 ある時は一回目同様小さなお菓子をくれる時。ある時は避け損ねたチラシを押し付ける時。 流石に慣れてきたもので、いつしか私も、アカギさんの言う「愛」に軽く笑いを溢せるくらいになっていた。 そんなある日、手渡された小さく綺麗な箱。大きさ的に化粧品だろうか。「はい」と渡されたそれに、少しだけ違和感を持ってしまった。その原因はすぐに分かって、思わずこれは愛じゃないんですか?なんて冗談を言ってしまう。僅かに目を見開いたアカギさんは、笑いを堪えながら「そうだね」と返した。 そして、 「これは下心」 なんて。 …それはずるくない?! 私の唇を擦るその親指に、思わず噛みつきたくなった。 20210607 ← ×
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