青が泣いている

本当はずっと前から気づいていたけれど、敢えて自分から口にすることはなかった。彼女の気持ちはすごく嬉しかったし、できることなら「ありがとう」と一言伝えたかった。だけど、そういうわけにはいかないよね。一度口を開いてしまえば、きっと「ありがとう」だけじゃ済まないから。

足を止め振り返って、彼女と向き合う。不思議そうに彼女は足を止め、首を傾げた。

名前ってさ、よくもまぁ飽きずに俺といるよね。
え、どうしたの急に気味悪いんだけど。
俺ってさ、いつどうなってもおかしくないじゃない。
縁起でもないこと言わないでよ。
俺と一緒にいても、良いことなんてひとつもないよ。

いじわるだなって自覚はあった。予想通りみるみる歪んでいく表情を、俺はいったい何回見たことだろうか。こんな風にしか彼女の気持ちを確かめることができなくて、我ながら子どもだなとは思う。その表情を見て、俺はホッとしたよ。
君にとって俺の言葉がどれほどの影響力を持つのか、実は結構分かってるつもり。自惚れてるよね本当に。ああ、幸せだなぁ。

「ねぇ、なに笑ってるの」

膨れっ面の君に、たった一言だけど伝えたいことがあるよ。だけど、一生伝えることはないんだろうなぁ。君の人生を俺に縛り付けるなんて、できっこないじゃない。好きな子にはいつでも、笑っていてほしいと思うじゃない。

ねえ、ずっと側にいて。

そんなこと、言える訳ないじゃない。






20141116








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