ラレタイ

表現するなら、それは正に甘い言葉だった。どろどろに甘くて、色も分からなくて、様々なものが混ざり合った、言葉。その本質を、分かるような気はしていた。ただ、興味があったわけでもないから突き止めはしなかった。鼓膜を揺らし続ける鈴のような声は、嫌いではない。


「アガギさーん!好きですよー!」
「はいはい」
「相変わらずクールですねー!格好良い!」
「はいはい」
「大好きです」


望まれる返答は、世間一般でいう愛の言葉ってやつなんだろう。生憎そんなものをコイツに持ち合わせているわけはない。誰か別の奴に、ってわけでもないけど。
それなのに、言葉の裏に秘められた、本当のことってやつが見えてきて可笑しさに笑いそうになる。貶めたいわけではない。ただ、思い通りに動かされるのは癪だ。


「俺も好きだよ」


何食わぬ顔でそういうと、ぴたりと固まる表情。
ほら、やっぱり。


別に面白くもなんともないのに、気づいたら口元は笑っていた。

交わらない世界から伸ばされた手。
掴めるわけない。
それでも、伸ばされた手。


綺麗な指先を前に、できることなんて何ひとつない。


だからこそきっと、俺に、俺を。



嫌われたい忘れたい。



(振り払ってあげるほど、優しくなんてない)







20120228








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