君が追いかけた星



「俺、心葉と結婚するんだと思ってた」


僅かに紅潮した頬は、慣れないアルコールのせいだろうか。緩んだ口元から突然繋がれた幼馴染の言葉に、酔いが醒めるような、さらに酔わされるような。

店内の賑やかな音が遠のき、曖昧な感情のまま一瞬だけ時が止まる。
久しぶりに二人で飲もうか、最後かもしれないし。なんて心にもない冗談で約束をした。向かい合って語り合って。あの頃と変わらず、同じ表情で笑い合った。


暖かく、柔らかく細められた瞳には、橙の照明がゆらりと滲んでいる。

ふと、そこに映った自分の表情にあの頃の姿が重なった。懐かしさに追随する感情。浮かされるように伸ばした指と、たった数文字に詰められた全て。

満足そうなその顔に、ずっと欲しかった答えを見つけたような気がする。



いつの間にか終わってしまった物語。



君のその言葉で、私はやっとひとつの結末に後書きをつけることができるんだろう。



20210131


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