今、自覚したよ それは雨のようだと思った。若しくは、滝のようだと。だが、それは全く違った。どんな豪雨であれ壮大な自然の神秘であれ、見慣れてしまえば心を打つものは少ない。こいつ涙は、何度見ても慣れることはなかった。 「…何故お前が泣くんだ」 大きな瞳からポロポロと涙が伝い、弾く一粒一粒が宝石のように煌めく。手を触れるのも躊躇って、溜息だけを送った。窓の外は、可笑しいくらいに晴れている。 思えば、俺は彼女にこんな顔をさせてばかりだ。それでも、どうすれば笑ってくれるのかなんて分からない。そもそも、俺は彼女に笑ってほしいのか? ――人付き合いは、あまり得意ではなかった。何かと干渉してくる彼女を、鬱陶しいと感じないわけではない。今この瞬間も、出すべき言葉が見つからず深い呼吸を繰り返すばかり。彼女の瞳に映る俺が、ぐにゃりと歪んだように見えた。 「クリス」 「なんだ」 「泣き虫な女は嫌い?」 そんなことない。 むしろ好きだと、言う代わりに視線を逸らした。 (ああ、今気づいた) 20120327 ← ×
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