..xx 共同戦線 xx..





その人物こそ、平和島静雄だった。
サングラスの奥に瞳は、冷たく笑っていたような気がした。

肩に置かれた手に力を入れられ、痛みに顔を顰める。

彼にとっては少し握る程度なのだろうが、帝人にとっては今にも骨折しそう痛みだった。

その手を撥ねようとしたが、なかなか離してはくれない。
それどころか、更に強い力を入れられた。


「ゲームオーバーだな。竜ヶ峰」

「静雄さん・・・、どうして・・・っ!?」


恐怖と痛み、それと混乱から徐々に涙目になってきた。


なぜ、あんなにも仲の悪い臨也と静雄が手を組んでいるのだろうか。


会えば毎度のごとく、喧嘩どころか殺し合いになっているのに。


「もう捕まっちゃったの?早いね」


先ほど曲がってきた角から現れた臨也は、「お疲れ、シズちゃん」と、静雄の肩を軽く叩いた。


こんな近くにいても互いに牙を剥かない状態でいる二人なんて、初めて目にする。
いや、きっと誰一人して見たことないだろう。



静雄はそんな臨也を一瞥すると、目の前にいる青ざめた少年に視線を戻した。「お前を捕らえるために、アイツと組んだ」

「組んだって…僕はそんなコト聞いていません。無効です」


鬼側は臨也一人でなければならない。

でなければ勝ち目なんて欠片も存在しないから。


しかし臨也はただ笑みを浮かべるだけだ。


「臨也さん!!」

「ダーメ。結果は結果。それに【鬼は俺一人】とは言ってないでしょ?」

「それは……そうですけど…でもっ!」

「あーもー。素直に負けを認めてよね」

「ちょ、臨也さん…っやめて下さい!!」


腕を背後に回され、手を縛られた。
冷たい感触と鎖の音からして、おそらく手錠だろう。


「行くか」


静雄の肩に担ぎ上げられるが、抵抗の仕様がなかった。
手は後方に拘束されるし、池袋最強の青年の腕によって体は締め付けられるし。

誰か通行人と擦れ違った際に助けを求めるしかない。


「楽しみだなー。太郎さんの泣き顔とか、あーんな姿とか。
 そうそう。今ここって夜間工事のため立ち入り禁止区域になってるから、俺ら3人しかいないからね」

「――そんな…っ!」


人がいたとしても、この二人に関わろうとしないだろう。


このゲームの勝者はスタート前に決まっていたのだ。

だが、今更どうにかなるはずもない。


「今日から3人で楽しく暮らそうね、帝人君」







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