企画とか記念とか | ナノ


こう言っちゃあなんだと思うけど、ナマエのしていることは心底バカバカしいと思う。
一角にこだわる必要が、どこにあるのかわからない。
あんなにだらしなくて不遜な男を好きになるナマエの目を、腐っていると言ったことがある。
どうやらナマエは脳みそもおかしかったようで、うん、知ってるよ、と言って笑った。



この授業を取っている学生は毎年少なくて、狭い教室でいつも講義を受ける。
ナマエの座る席はいつだって後ろから3列目。しかも、出入り口のドアに近い場所だ。
3つ並んだ席の真ん中に座るナマエの、右隣の席にはいつものようにバッグがおかれている。


「斑目、また遅刻か」
「…睡眠事故です」
「毎度毎度、お前は本当に」


ふいにドアが開く音がして、教授はそちらを向く。
そして、遅刻してきた一角といつものやり取りをする。
ナマエは決してこちらを振り向くことはない。
僕はいつも一番後ろの席にいるから、このやり取りをしているナマエの表情を見たことはない。


教授との応酬を終えた一角が席につくのは、いつもナマエの左隣。
そしてナマエはいつものように一角に、中断される前までのノートを渡す。
それを見て、僕はやっぱり思う。





「もうやめたらいいのに」
「弓親、最近そればっかりだよ」
「言わせてるのはナマエだ」
「うん、知ってる。いつもありがとう」


昼の学食は混むから好きじゃない。だからいつも購買で買ったものを食べる。
今日は天気がいいから外のベンチで食べることになった。
一角は講義のあと教授に呼び出され、教室の片づけをさせられている。いつも遅刻をする罰だ。



「ほんっと、ナマエは見る目がなさすぎる」
「そうだよねぇ。あたしもそう思うよ」


ナマエは判っていない。というか、きっとわかろうとしたくないのだろうとさえ思う。
自分たちに先はあるのかとか、その先は平行線なのか交わっているのか。
間違いなく、距離を作りたくないナマエの選択する道は平行線なんだと思う。
いつも丁寧に作る弁当をつつきながら、どこかすっきりした表情を見せるから正直腹が立つ。
悟りを開くまえにすることがあるだろう、と思う。


「あーーーーーーー、つっかれた」
「お疲れ一角」
「おぉ」
「自業自得だね、一角」
「なに弓親、機嫌悪ぃのかよ」


誰のせいだと思っているのかわからないけど、つくづくどこかとぼけた男だ。
しかもナマエに、その玉子焼きくれ、なんて言っている。
ナマエはナマエで、いいよ、なんて言いながら差し出している。本当に何なんだこの2人。


でもナマエの表情を見ていたら、怒っていられるだけでもないように思う。
何でもないように笑っている。その顔の下の感情はどうなんだろうか。


所詮僕は自分の物差しでしかナマエの感情を測ることができない。
だから余計にいらいらするのかも知れない。
何も知らない自分。何もできない自分。何も見えていない自分。




ただ、そこにある目に見える真実は、ナマエが笑っているということだけだということだ。

一角も好きだけど、ナマエも大切だ。
だから、ナマエがいまはこのままでいいと思うなら僕もそうしてあげようかな、なんて考える。





「本当に、手がかかるよね、ナマエって」
「ごめんね、弓親」
「仕方ないよ、妹分だからね」



しばらくは見守ってあげるよ、なんて何度思ったことか知れない。
でも、僕は今日もそう彼女に誓う。





仕方ないよ、妹分だから。
ただ、それだけ。









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1周年記念人数限定リクエスト。こちらはチエコ様へ。
『つかずはなれず』の弓親視点。
なんだかよくわからないことになりましたが、気に入っていただけたなら嬉しいです。
正直、すらすらと書けてしまいました。安産過ぎて困りました。笑
こんな機会を与えてくださり、本当にありがとうございます。

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