「あのっ、私…
財前くんが好きです!」



名前も知らない女が、そう言いながら俺を上目遣いで見つめる



「……」




こういうの、ほんまめんどいねん


心の中でそうぼやきながらため息をつく




すぐに帰ろうと思ったのに、部活が終わったところを待ち伏せしていたらしいこの女が俺を呼び止めたのだ



「ダメ、ですか…?」



効かんわ、そないなバレバレな涙目作戦なんか



これだから女は、と嫌気が差す




さっさと断ったろ、とその女から目を反らすと



「……あ、」




遠くの方に、みかげ先輩を発見してしまった



そのまま俺の視線は、彼女に釘付けになる



「……っ、」



どうして彼女は、また――――――



「…何、泣いとんねん

あほ」




俺がそう呟くと目の前の女は自分と勘違いしたのか、きょとんとした表情になる



俺はそいつを無視して、駆け出していた



みかげ先輩の涙を止めたい



そんな俺らしからぬ理由で











「みかげ先輩っ…!」



俺が近くに寄って声をかけても、彼女は俺の方に振り向きはしなかった



「……」



みかげ先輩の視線の先を辿ればそこには、後輩の女の子から告白されている白石部長がいて



やっぱり、と悔しくなって




涙を静かに流している彼女の目に、俺だけを映して欲しいとか思ってしまう




あぁ
いつの間にか俺は



どうしようもなく、この人が




「みかげ先輩、聞いて下さい」



先輩の肩を掴んで、彼女を俺の方に向かせる








「みかげ先輩、俺…


アンタのこと、かなり好きみたいっすわ」








『……光、くん』








やっと、彼女の瞳に俺が映った










「今日はぼくを見てはくれないのですか」

「今いいとこなの」
















*
bacK

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