「じゃぁお疲れ、財前」



白石部長がいつものうざいくらいの爽やかさで言った


俺は軽く頭を下げて白石部長と道を別れる



今日は部活が長引いて、いつもより帰宅の時間が遅く、すっかり暗くなってしまった



「はぁ、Mステの録画しとったら良かったな…
はよ、帰らな」



俺はため息と同時にそう呟き、帰る足を早める



すると、



「…?」



後ろからダダダッという足音と



『蔵ノ介ッ……!』



という女の声がしたかと思うと、いきなり抱きつかれた



「……!?」



突然のことに、振り払うことも出来ずポカンとしていると、女はいきなり泣きだした



『ごめんね、私が悪かったのっ…』



身に覚えは無いが、泣き出す女ほどめんどくさいものはない



俺が苛立ち振り払おうとすると、女が顔を上げた



あれ?この女、どこかで…



そう思い、突き放そうとした手を止める



『謝るから、だから別れないで、お願い!蔵ノす……け、じゃない?』



「…ちゃいます」



俺は深いため息をついた


思い出した、この人は確か白石部長の彼女だ



どうやら俺を白石部長だと勘違いして抱き着いたらしい




『あちゃー、間違えちゃったね』



彼女は、何がおかしいのか涙をひっこめ腹を抱えてゲラゲラと笑う



「…彼氏と他の男を間違えるなんて、信じらんないっすわ」



皮肉のつもりで言ったのだが、彼女はフッと笑って悲しそうな顔になる



『そうだよね、こんなに好きなのに

馬鹿みたいだ』



「……」



俺が黙っていると、彼女はバチン!と自分で頬を叩いた



『よしっ、今度は本物の蔵ノ介を追いかけることにするよ!』



「はぁ…」



なんなんだ、このひと

こういう訳のわからないタイプの人間は正直、苦手だ



『間違えてごめんね
では、さらば!財前光くん!』


俺の名前、知ってたのか…と思いながら


「あ、今度は間違えんようにして下さい」



俺が声をかけると、彼女は嬉しそうに頷いてまたダダダッという音を出して去っていった




俺には、まだ彼女のぬくもりが残っていた











「おはようございます」


「もう、夜だよ」













思い付きで始まりました新連載!

お題は「家出」さまよりお借りしました

相手役は、連載では初の光くんです(^ω^)!

彼は扱いやすいからスラスラ書けますなぁ(^ω^)
bacK

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テーマ「人外ファンタジー」
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