50 永遠の二分の一
「名前……」
待ちわびたはじめさんの声が聞こえる。
駆け寄って障子戸を開ければ彼は素早く身を滑り込ませて私を抱き締めた。胸に顔を埋めて彼の香りを吸い込む。
「お帰りなさい」
「ああ。ただいま」
「会いたかった……」
「俺もだ」
はじめさんが私の頬を包みじっと見つめた。苦しい程に焦がれた青色が切なくて愛しくて、暫く見つめ合う。やがてそっと顔が近づいて唇を捉えられたかと思うと、直ぐ様激しく舌が絡み合った。
腰を引き寄せられ頭の後ろに当てられた手が、これ以上ないくらい唇を密着させる。角度を幾度も変えて長い長い口づけをした。
「名前が欲しくて、狂いそうだ」
応えるように腕を回し着流しの背をぎゅっと掴む。
わずかの間も惜しむように唇を離さないまま、はじめさんの手がもどかしげに腰紐を解き羽織も夜着も一度に肩から引き下ろし、呆気ないほどするりと私は身ぐるみを剥がされた。
私の髪に触れ結紐を解いた手が確かめるように身体の線を撫でていく。手の動きに添って彼の着流しの袖が肌に触れれば衣擦れの音がして、自分だけが何も纏わない羞恥に全身がかあっと熱くなった。
彼の結い紐を指先で引けば少しだけ癖のある紫黒の綺麗な髪が白い襟巻きにさらりと纏い、私は不器用な手つきでそれを外していく。
背伸びをして首元に顔を寄せれば、はじめさんは少し驚いたように私を見つめ、次にその瞳がゆっくりと細められた。
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MATERIAL: ユリ柩 / FOOL LOVERSAZURE