黄黒 | ナノ


黄瀬涼太は困っていた。端正な顔を歪めて俯く様は傍から見れば美しかったかもしれないが、当の本人はそれどころではない。
(青峰っちはどう考えても黒子っちが好きで、黒子っちは分からないけど俺は黒子っちが好きで、だから、つまり……)
ノートには三人の名前が書かれている。青峰、黒子、黄瀬。青峰と黄瀬の名前から出ている矢印は黒子に向かっていた。それが綺麗な三角形を描いている。
(………まじかよ……)
黄瀬は青峰が好きだ。勿論恋愛感情ではないが、黄瀬の世界を変えたひとだ。好きにならない筈がない。そうして、恋愛感情として黄瀬は黒子が好きだ。ずっと傍にいてほしいし自分だけ見て欲しいし自分だけのものになってほしい。なのに、好きなひとの好きなひとが自分の好きひとだなんて、ちょっと笑えない。
(……でも諦めたくないし……)
どうしたらいいのか、ふっとついた溜息に幸せが逃げるよ、と言葉を返したのは桃井である。
いつからそこにいたのか、しかし動く気力すら根こそぎ奪われている黄瀬はノートを隠すこともせずにそっスねと力無く応える。ノートを覗き込んだ桃井は暫く何も言わなかった。
「きーちゃん、だめだよ」
「……は?何がっスか?」
「だめだよ、青峰くんはテッちゃんが好きなんだもん。だからだめ」
「はあ?」
桃井が言いたいことの十分の一も理解出来ない。何が駄目なのか。そんなの桃井に言われることではないし、そもそもこっちの勝手だろう。誰を好きだろうが。
「意味わかんないっス」
「だってきーちゃんとテッちゃんが付き合ったら、わたしテッちゃんとずっと一緒にいられないじゃない」
「……はぁ?」
今度こそしっかり意味が分からないという表情を全面に押し出した黄瀬に、桃井はそれはそれは綺麗な笑顔を浮かべて応える。
「青峰くんはわたしの幼なじみだから、切っても切れない縁があるもん。だから青峰くんとテッちゃんが付き合えばわたしはずっとテッちゃんと一緒にいられる。近くにいられる。ただ男ってだけのひとたちにテッちゃんを取られるんだったら、わたしは青峰くんがいい」
「…………」
「……なーんてね、ごめん。びっくりした?全部嘘だよ。さ、早く帰ろ?みんな待ってるよ」
「…………本当に嘘なんスか」
「何が?」
「今の、全部」
「嘘だよ。……って言ったらきーちゃんは安心する?」



//有海
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