※今年のバレンタインに書いてお蔵入りしたやつ
※※バレンタインなのに殺伐としてる
※※※レイン誕生日おめでとう

「そもそもバレンタインっていうのは、バレンティヌスが投獄され様々な拷問を受けた後に死んだ日のことを言うんです。それをよく分からない祝い方をするひとたちの気が知れないですねー」
「…レイン、それはわたしに対する嫌味かしら」
「いやいやー。そんなことあるはずがないじゃないですかー。キングの度重なる、まさしく捨てられた子犬のような目に絆されてチョコを作ってあげてしまう撫子くんを尊敬しているんです」
「ただの嫌味じゃない」
嫌なひとね、そう言って撫子は溜息を吐いた。手に持っているのは綺麗にラッピングされた包である。この壊れた世界にも行事の概念はいまだに(キングのせいで)息づいていた。目下その犠牲になるのはこの女であるのだが。あんな目で見られようが何されようが無視すればいいものを、撫子は毎回律儀に期待に答えてやるのだ。御苦労なことだと思う。自分がその対象だったら御免被りたい。
「で、撫子くんはどうしたんですー?キングならさっき出て行って此処にはいませんけど」
「…知ってるわ」
「そうですか」
恐らく、とレインは思う。撫子が此処に来た理由は自分が考えているもので正解だろう。手にしている包が3つあることからもそれが伺える。馬鹿なひとだ。あなたにとってボクはどこまでだって悪役にしかなりえないのに。何を期待しているんだろう、このひとは。ボクは確かにあなたに優しいかもしれない。でもそれは、自分のためなんですよ。ボクはボクの願いのためにあなたに優しくする。決してあなたのためではない。わかってないんでしょうね。
――ああ、吐き気がする。
「バレンタインなんて意味分からない行事に心躍らせるひとの気がしれませんねー。ただの製菓会社の陰謀じゃないですか…で、撫子くん。ボクになんの用ですか?」
「…自意識過剰ね。別にレインに用事があって来たわけじゃないもの」
「そうですかー」
「そうよ」
撫子はレインの言葉を受けても顔色ひとつ変えなかった。逆に微笑んでさえみせたのだ。それが何だか腹立たしかったりするのだけど、元はといえば自分が蒔いた種だったので何も言えない。見ようによっては此方を睨みつけているともとれる撫子に向かってレインはへらりと笑ってみせた。カエルくんが阿呆だなーお前って言っていたので軽く頭を叩いておく。畜生、今日は厄日だ。





//有海
∴棘で結われた心臓
(title:白々)
人気急上昇中のBL小説
BL小説 BLove
- ナノ -