身を切らすような大音量で蝉が鳴いている。眩しすぎるほどの太陽の光が降り注いでいるが、覆い繁っているためコンクリートジャングルと謡われる都会よりも幾分か涼しい。長時間の乗車で凝り固まった体を解すように伸ばすと、骨が軽い音を立てた。
「空気も美味しいし素敵なところだね、さっちゃん」
「そうだな」
さらりと爽やかな風が髪を浚っていく。その感触に思わず目を細めていると、ぽすんと小さな衝撃が頭を襲った。
「荷物はこれだけか」
「大丈夫だにゃ、自分で持てるよぉ」
「いいから。お前ご希望の天体観測は向こうの公園でしようと思ってるから、お前ちょっと確認してこい。俺はその間にチェックインしてくる」
「え、あ、でも、」
「さっさと行ってこい」
「うー…はぁい」
ハヤトが最後まで台詞を言い終わらないうちに砂月は歩き出してしまう。何時も見るスーツ姿ではないその後ろ姿がやけに新鮮で、自分は何も知らないのだとハヤトは思った。何も知らない。本当に何も。
ぼんやりと後ろ姿を眺めていると丁度よく振り返った砂月にさっさと行け、と手を振られる。態度に反して柔らかいその仕種にただ黙って頷く。蝉の声が響いていた。




//有海
∴ネクロポリスの永眠
(title:食用)
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