※学パロ
さっちゃあん、と情けない声が背後から聞こえてきたが、男は面倒そうに眉を顰めただけだった。傍らに転がった、男にははたして似つかわしくないピンク色の紙パックに手を伸ばすが、中からは微かな音しか聞こえてこない。一回り大きなものを買うべきだったか、ぷしゅっと気の抜けた音を立てて紙パックを潰す。さっちゃあん、また情けない声。
「……なんだよ」
「トキヤくんがっ…トキヤくんがあ…!」
苛立ちの芽が成長するのを感じながら、男は振り返る。視界に飛びこんできたのは、今にも泣き出しそうな顔だ。大方、双子の弟と喧嘩でもしたんだろう。厄介なことだ、彼らが喧嘩をすると尻拭いさせられるのは何時も自分である。主に眼前にいる男側の。
「いいからさっさと謝ってこい。どうせお前が悪いんだろうが」
「トキヤくんがボクのプリン勝手に食べちゃった…!」
「プリンって……餓鬼か」
餓鬼じゃないもん!と怒りの矛先を微妙にずらすことに成功した男は、プリンぐらい帰りにコンビニで買えばいいだろと吐き捨てるように言う。さっちゃん、一緒に買いに来てくれる?不安気な表情に返事を返さないまま、そっと髪を撫でた。




//有海
∴それは嘘だね
(title:へそ)
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